税金

給与明細の内容を理解しよう(わかりやすく図で説明)

2017年11月17日

会社で働いている人にとって、給与明細はとても身近なものです。
ですが、実際に詳細に中身を確認している人はどれくらいいるでしょうか?

ここではどのような項目が給料から引かれているのかを詳しく説明していきたいと思います。

雇用形態(正社員、パートなど)によって給料かれ天引きされる内容も変わってきます。
主に天引きされるものとしては「健康保険」「厚生年金」「雇用保険」「所得税」「住民税」の5つ。

これらをどれくらい理解しているでしょうか。
ここでは実際に「給与明細の見方」について説明していきたいと思います。

 

引かれているのはこの5つ

・健康保険(40歳以上は介護保険あり)
・厚生年金
・雇用保険
・所得税
・住民税

それぞれについて詳しく説明していきます。

健康保険について

健康保険は、病気やケガをしたときに役立つもの。自己負担30%で病気やケガの治療を受けることが出来ます。

また本人だけではなく、扶養家族(配偶者や子供、両親など)の分もすべて30%負担で済むようになります。

また70歳以上は原則10%負担になり高齢者には負担が軽くなっています。

市区町村によっては小学校6年生、または中学3年生までの医療費が無料というところもあります。

健康保険料の計算方法

まず先に健康保険料の仕組みについて説明します。
健康保険料に関係するのは以下の2つ。

1.会社が所属している保険組合
2.受け取っている給与額(標準報酬)

1については、健康保険組合連合会(大手企業)、全国健康保険協会(中小企業)人材派遣健康保険組合(派遣社員)などの幾つかの種類があります。

2については、毎年の4月から6月の平均給与額(標準報酬)で決まります。
そして標準報酬額に比例して細かく等級が決められており、等級によって健康保険料も変わります。

等級が高い(給与が多い)と保険料も高くなります。

<参考>
健康保険組合連合会(大手企業)
全国健康保険協会(中小企業)

健康保険と厚生年金を二つまとめて「社会保険」といいます。

この社会保険料は前述の通り、給料に比例して支払い金額が決まります

実際に算出された額は全額払うのではなく、会社と折半です

国民健康保険の場合は、すべて個人負担なのに対し社会保険に関しては会社側も半分支払うことになるので大分お得です。(その分会社の負担は大きくなります)

健康保険料については、収入が増減したら、その都度変更されることになります。

健康保険のメリット

健康保険は加入しているだけでさまざまなメリットがあります。医療費が30%になるだけではありません。

制度 内容
出産育児一時金 1児につき35万円。双子なら70万円
出産手当金 原則、出産日以前42日、出産後56日以内の期間中で会社を欠勤した日について、標準報酬日額の3分の2が支給される
児童手当 3歳未満は1人あたり月額1万円、3歳以上小学校修了前は第1子~第2子は1人あたり月額5千円、第3子以降は1人あたり月額1万円が支給される
傷病手当金 病気やケガで休職し、会社から給料が支払われない場合、会社を休んでから4日目から最長1年6か月の間、標準報酬日額の3分の2が支給される
高額療養費 高額の医療費の負担があるときは、毎月一定額を超えた金額を払い戻してくれる制度

たとえば、「出産育児一時金」。
これは子供が生まれた時のお祝い金のようなものです。
一児につき35万円の一時金を受け取ることができます。

他にも「出産手当金」といって、出産日以前42日、出産後56日以内の期間中に会社を欠勤した日について「標準報酬日額」の3分の2が支給されます。

※標準報酬日額とはおおよそ給料の1日分です。

他にも「児童手当」といって、一定の所得以下の家庭では子供が9歳になるまでは子供一人当たり5千円から1万円の支給があります。(3歳までは1万円)

子供関係以外では「傷病手当金」があります。
病気やケガで休職したにも関わらず会社から給与が支払われない場合に、会社かを休んでから4日目から最長1年6か月の間、標準報酬日額の3分の2が支給される制度です。

くわしくは 傷病手当金は、ケガや病気をした時の生活保障 を参照してください。

さらに「高額療養費」の制度もあります。
こちらは月ごとに計算し、医療費が一定以上かかった場合(おおよそ8万円以上)にそれ以上は支払わなくてもよいというとてもありがたい制度です。仮に入院、手術をして30万円かかったとしても上限8万で済むということです。

くわしくは 高額療養費で医療費の負担を減らす を参照してください。

介護保険について

40歳以上の人に加入が義務付けられているのが介護保険です。そのため40歳未満の人は介護保険料は天引きされません。

介護にかかる費用を、より多くの人から徴収しようという制度です。
介護保険の歴史については、1997年(平成9年)12月に介護保険法が制定され、2000年(平成12年)4月に施行されました。

この額についても、健康保険と同じように標準報酬の等級によって決まります。

厚生年金について

厚生年金は将来受け取ることができる年金のことです。
年金は自分のための積立金ではなく、高齢者世代の年金給付に必要な費用を補う制度です。

厚生年金は2階建てである

厚生年金は2階建て年金です。

一般的に知られているのが国民年金。
国民年金は日本に住んでいる20歳から60歳未満のすべての人が加入する必要があります。

正社員やフルタイムで働いている場合は厚生年金(第2号被保険者)への加入となります。

同じ年金なのですが、厚生年金は国民年金に比べてお得です。
将来受け取る年金については以下のような違いがあります。

国民年金と厚生年金の負担額
国民年金と厚生年金の受取額

国民年金・・・国民年金のみ
厚生年金・・・国民年金に加えて厚生年金も受け取れる

毎月の支払額は増えますが、実際に年金を受取る際は10万円以上も差が開くこともあります。
(厚生年金加入年数や支払額によって将来の受取額が増減します)

もちろん、厚生年金を支払う際には国民年金と厚生年金分の合計額ですが、実際は会社側が半分負担してくれるので、それほど大きな額にはなりません。

厚生年金の計算方法

前述の健康保険と同様で、健康保険と厚生年金を二つまとめて「社会保険」といいます。
この社会保険料は、給料に比例して支払い金額が決まります。

社会保険料(健康保険と厚生年金)は4月~6月の平均給与額で決まります。
それぞれ細かく等級があり、その等級によって少しずつ額が変わります。

実際に算出された額は全額払うのではなく、会社と折半です。

雇用保険について

雇用保険とは、失業保険のことです。(正式名称は雇用保険の失業給付と言います)
失業保険は会社を退職した際に支給される保険です。この保険料として毎月一定額を支払っています。

雇用保険料も社会保険と同様に会社側も支払います。金額的にも社会保険ほど高額ではありません。

◆2017年の4月の保険料

労働者負担 事業主負担 雇用保険料率
一般の事業 3/1,000 6/1,000 9/1,000
農林水産・清酒製造の事業 4/1,000 7/1,000 11/1,000
建設の事業 4/1,000 8/1,000 12/1,000

個人の負担は1,000分の3です。これは給料30万受け取っている人は0.3%である900円を毎月支払っていることになります。

会社側が少し多めに支払う形になります。年金や健康保険に比べてだいぶ安く感じるのではないでしょうか。

所得税とは

所得税は、「累進税率」になります。
累進税率とは、所得によって税率が決まることです。所得が少ないと税率も少なく、所得が大きくなると税率が大きくなります。

所得税は前払いです。所得によってある程度の所得税額を計算し、毎月一定額が給与から引かれます。
年間の所得総額で所得税は決まってくるため、負担する1年分の所得税を毎月少しずつ前払いとして天引きしていく仕組みです。

所得税の計算は会社側で行います。
実際社員から天引きした所得税の合計と、本来収めるべき所得税の増額とを比較し、天引きした金額が多ければ引きすぎた所得税の一部を「年末調整」として返します。

一般的には所得税を少し多めに集めておいて、年末調整後に取りすぎた分を返すというやり方をします。
最終的に手渡されるのが「源泉徴収票」です。

源泉徴収票には、年間いくら稼いだのか、それに応じて所得税をいくら納めたかのがわかります。
また扶養親族の人数や社会保険料や生命保険・損害保険(申請者のみ)の控除額がわかります。

ただの1枚の紙切れですが、自分の稼いだ額から社会保険等で引かれる額、税金の控除額、扶養親族までのすべての情報がわかるとても大切なものです。

所得税の計算

天引きされる所得税は「源泉徴収税額表」にもとづき計算されます。
国税庁:給与所得の源泉徴収税額表(平成29年分)

毎月の給料から「通勤手当」と「社会保険(健康保険・厚生年金」「雇用保険」の保険料を引いた金額を計算します。
次に自分が扶養している「扶養親族」の人数に応じて、差し引く所得税の金額を表から算出します。その額が所得税として毎月天引きされる額です。

ボーナスの場合も、毎月の給与と同様に社会保険額と雇用保険額を差し引きます。
差し引いた金額と扶養親族の数で別表の一覧表により求めた「%」を掛けて計算します。

扶養親族が二人、ボーナスの額が70万円なら「2%」が求められます。
差し引いた金額に2%をかけた額が所得税として給料から差し引かれます。

国税庁:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(平成29年分)

住民税について

給料から引かれる税金は「所得税」と「住民税」の2つがあります。

所得税は年間で支払う額を「前払い」として徴収(給料より毎月天引き)します。
住民税は、前年の所得に対して支払う「後払い」になります。

平成29年の場合は、平成28年1月1日から12月31日分の住民税を支払うということになります。
新入社員の場合は前年所得がないため、入社した年の住民税負担はありません。

また住民税については「給与から天引きされる場合」と「個人で直接、市区町村へ支払う場合」があります。

住民税の仕組み

住民税は前年度の所得分を市区町村役場にて計算して分配(都道府県と市区町村)にします。

所得税のところでも説明しましたが、会社が年末調整後、源泉徴収票を作成します。
源泉徴収票を各個人ごとに手渡しますが、同時にその人の住所地の市区町村にも送付します。

これをもとに市区町村では、それぞれ個人の住民票の計算を行います。
計算は4月から5月にかけて行われ、それぞれ6月~翌年5月までの給料分から天引きされます。

サラリーマンの場合は、住民税は毎月の給料から天引きされ、ボーナスからは引かれません。
所得税は給料とボーナスの両方から天引きされます。

住民税の計算

住民税は都道府県民税と市区町村民税を合わせたものです。そしてそれぞれに「所得割」「均等割」「調整控除」があります。

この住民税は各市区町村によって、金額が変わります。
詳しくは各市区町村のホームページをご覧ください。

住民税で注意したいこと

所得税は前払いで、住民税は後払いです。
そのため、その年の給料が高くなればなるほど、翌年の住民税も比例して高くなります。

その年限り給料が多い場合は要注意

会社員の場合は、年によって大幅に住民税が変わることはあまりないと思いますが、個人事業主等の場合は翌年の住民税を考慮して生活設計を立てることが大切になります。

まとめ

給与明細はあなたにとってとても大事なものです。
ですが、給与明細について事前に教育を受けている人はどれくらいいるのでしょうか?

今まで「何となく引かれているなあ」と思う人がほとんどではないかと思います。
社会保険や税金などの仕組みなどは誰からも教えてもらえません。

本来は学校教育で学ぶべき内容のはずですが、そういった取り組みは皆無です。
自ら勉強していくしかありません

今まで勉強したことがないのですから、給与明細の見方や社会保険や税金の仕組みがわからなくても当然のこと。自分で勉強しなくても、会社側ですべて処理してくれますから困ることもないでしょう。

一方で新聞やテレビ雑誌などでは、「このままでは年金がもらえない」「これからさらなる増税」などと不安を煽った記事を目にします。

これらが真実なのか、また将来に向けて何を準備していなければならないのか、社会の仕組みがわからないとただ漠然と不安にかられながら生きていくしかありません。

自ら勉強し知識を増やして、マスコミに惑わされずに自分で判断できるようになりたいものです。

 

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