健康保険

高額療養費で医療費の負担を減らす

2017年11月3日

高額療養費制度とは、同一月(1日から末日まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合に、一定の上限額を超えた場合に払い戻される制度です。

上限額は年齢や所得によって変わってきます。また同じ世帯で同じ保険に加入していれば合算することもできます。

いざという時にとてもありがたい制度です。

 

医療費負担の上限額は

毎月の上限額は、年齢と所得水準によって分かれ、世帯も合算されます。

・70歳以上か69歳以下かで分かれる
・所得が多いと上限額も上がる
・家族合計の医療費も合算対象(同じ保険のみ)

69歳以下の方の上限額

区分 加入者の所得水準 ひと月の上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円~ 252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770~約1,160万円 167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収約370万円~約770万円 80,100円+(医療費-267,000)×1%
~年収約370万円 57,600円
住民税非課税者 35,400

70歳以上の方の上限額(平成29年8月から平成30年7月診療分まで)

区分 加入者の所得水準 個人ごと ひと月の上限額(世帯ごと)
現役並み 年収約370万円~ 57,600円 80,100円+(医療費-267,000)×1%
一般 年収156万~約370万円 14,000円※ 57,600円
住民税非課税等 Ⅱ住民税非課税世帯 8,000円 24,600円
Ⅰ住民税非課税世帯 15,000円

※年間上限14万4千円

高額療養費の計算

・年収500万の60歳男性の場合
(例)4/10~4/20の間病院で入院手術し、治療費が30万円であった場合

区分はウに該当するため、計算式は「80,100円+(医療費-267,000)×1%」を用いる

80,100円+(300,000-267,000)×1%=80,430円となります。
実質の負担額は80,430円。

300,000円-80,430円=219,570円が高額療養費として支給されることになります。

高額療養費の具体的な内容

高額療養費で給付されるものは健康保険がきくものだけ

高額療養費は健康保険の制度になるので、保険が適用される入院料、検査費、手術費などが対象となる。
3割負担になるものが対象。

保険が適用されない差額ベッド代や食事代は含まれない。また健康診断や人間ドックも対象外。

高額療養費は月ごとに計算される

高額療養費は、同一月(1日から末日まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合に、上限額を超えた場合に払い戻される制度です。
例えば、4月15日から5月14日までの1ヶ月間入院していた場合は、それぞれの月ごとの保険料で計算されます。

自己負担額は世帯で合算できる

■個人の場合

加入者ひとりでの自己負担額では上限を超えないときでも、同じ月の別の医療機関等で自己負担を合算することができます。
※ただし69歳以下の場合は2万1千円以上であることが必要です。

この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象になります。

■世帯の場合

ひとりの窓口負担が上限額を超えない場合でも、同じ世帯で同じ保険に加入している方であれば、合算対象になります。
※ただし69歳以下の場合は2万1千円以上であることが必要です。

この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象になります。

過去12ヶ月以内に3回以上上限額に達した場合

過去12ヶ月以内に3回以上上限額に達した場合は、4回目から上限額が下がります。
このことを「多数回」といいます。

■69歳以下の方の上限額

加入者の所得水準 本来の負担上限額 多数回該当の場合
年収約1,160万円~ 252,600円+(医療費-842,000)×1% 140,100円
年収約770~約1,160万円 167,400円+(医療費-558,000)×1% 93,000円
年収約370万円~約770万円 80,100円+(医療費-267,000)×1% 44,400円
~年収約370万円 57,600円 44,400円
住民税非課税者 35,400 24,600円

■70歳以上の方の上限額(平成29年8月から平成30年7月診療分まで)

所得区分 本来のひと月の上限額(世帯ごと) 多数回該当の場合
現役並み 80,100円+(医療費-267,000)×1% 44,400円
一般 57,600円 44,400円

高額療養費Q&A

医療機関窓口での高額療養費の支払いはどのようになるのか

例えば入院する場合、事前に加入している医療保険から「限度額適用認定証」または「限度額適用認定・標準負担額減額認定証」の交付を受けて医療機関の窓口に提示すれば病院側で全て対応するため全ての負担をする必要はありません。

しかし「限度額適用認定証」等がない場合は、まずは全額負担をしなければなりません。
後日保険者に還付請求を行います。

尚、70歳以上の場合は全て病院側で手続きを取るので、実際の負担額のみ支払います。

(例)治療費が15万円の場合(上限額82,430円の場合)

■限度額適用認定証がある場合
⇒窓口で上限額82,430円のみ支払う。

■限度額適用認定証等がない場合

⇒窓口で15万円を支払う。

後日、保険者へ67,570円を還付請求
(15万円-82,430円=67,570円)

どのような医療費が対象になるのか

保険適用されるものは全て合算対象になります。

医療に該当しない食費や居住費、患者の希望による「差額ベッド代」「先進医療にかかる費用」等は高額療養費の支給対象にはなりません。

また69歳以下で個人で自己負担額を合算する場合は、1枚あたり1ヶ月で2万1千円以上であることが必要です。
たとえばA病院で5万円、B病院で3万円の場合は合算可能です。

月をまたいだ場合は合算できません。

高額療養費はいつ戻ってくるのか

受診した月から少なくとも3ヶ月はかかります。

高額療養費は申請後に各医療保険で審査した上で支給されます
この審査は各医療機関から出されたレセプト(診療報酬の請求書)の確定後に行われます。

医療費の支払いが困難な場合は、無利息の「高額医療費貸付制度」を利用できる場合があります。
この制度を利用できるかどうかは各医療保険によって異なります。

過去の医療費も対象になるのか(遡って請求できるか)

高額医療費がさかのぼれるのは、診療を受けた月の翌月の初日から2年です。

2年経過していなければ過去にさかのぼって、支給申請することができます。

高額医療費は医療費控除で使えるのか

年末調整や確定申告の際に、医療費控除として申請することができます。
医療費控除を行なうと、所得から控除されるため、翌年の所得税や住民税が安くなります

高額医療費、医療費控除の請求には共に領収書が必要になります。

その場合は先に高額療養費の還付請求を行います。その場合領収書を印をつけた上で即日返却されます。
返却された領収書を年末調整や確定申告で使用します。

高額療養費が使えれば民間の保険は必要ないのではないか

健康保険証があれば実質3割の負担で済みますし、高額療養費が利用できれば上限額以上は支払う必要はありません。
会社員の場合は、会社をケガや病気で休んだとしても傷病手当金を申請することができます。

先進医療さえ使わなければ、ある程度の負担で事足りてしまいます。

民間の生命保険は、国の制度の補完する意味合いがあります。

最低限の保障分だけを準備して、あとは貯蓄にまわすことが最良かもしれません。

日頃からいざというときのことを考えておくべきでしょう。

まとめ

高額療養費制度はとてもありがたい制度です。

1回でも入院や手術をすると数十万円かかることもあります。
それが2回も3回もおこなうと100万円を超えてしまうこともあるでしょう。

この制度がなければ金銭的な理由で手術を受けられない人が大勢出てきます。
この制度を利用することで上限額以上の負担をしなくてもすみます。

保険適用でない数百万の先進医療は民間の保険会社でないとできませんが、必要最低限の医療は受けることができます。

この制度を知ることで、安心して治療を行えることができるのです。

 

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