年金はいつからもらえるのか、いくらもらえるのか気になります。ここでは図を元にわかりやすく説明していきます。
国民年金は満額で777,800円(年額)です。
この額は40年間納めた時の満額です。納めていない期間があればこの額から減額されます。
年金には大きく2種類あります。それは「国民年金」と「厚生年金」です。
会社勤めをしている方、もしくはしていた方は厚生年金でそれ以外の方は国民年金に加入していると思えばよいでしょう。
年金は、払う時と受け取る時の呼び名が異なります。図のように、支払う時は国民年金で、受け取る時は老齢基礎年金と言います。この辺はわかりにくいところです。
わかりにくいのが厚生年金です。厚生年金は年齢によって受け取る内容が変わってきます。
図のように老齢厚生年金以外にも、年齢によって「報酬比例部分」と「定額部分」を受け取ることができます。
■目次
年金はいつから受け取れるの?
「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」は65歳より受け取ることができます。
厚生年金の「報酬比例部分」と「定額部分」については年齢によって65歳未満の方でも受取ることが可能です。
・男性の場合は昭和36年4月1日以前
・女性の場合は昭和41年4月1日以前
以下の図のとおり受け取り年齢が異なります。
国民年金のみの加入であれば「老齢基礎年金」のみが65歳以降に支給されます。
会社勤めをしており、社会保険(年金と健康保険)を納めた期間が1ヶ月でもあれば厚生年金を納めていたことになります。その場合「老齢厚生年金」も65歳以降に支給され、年齢によっては「報酬比例部分」と「定額部分」の支給があるわけです。
(例1)
昭和33年8月21日の会社員男性の場合
昭和32年4月2日~昭和34年4月1日の中に含まれているため、老齢基礎年金と老齢厚生年金は65歳から受け取ることができます。また63歳より報酬比例部分を受け取ることができます。
(例2)
昭和50年9月20日の会社員女性の場合
昭和41年4月2日以降の女性の方は老齢基礎年金と老齢厚生年金が65歳より受け取ることができます。
(例3)
昭和35年6月10日の専業主婦女性の場合
会社勤めをしていなかった場合は、65歳からの老齢基礎年金のみ受け取ることができます。
国民年金(老齢基礎年金)はいくらもらえるの?
支給要件
ここでは国民年金(老齢基礎年金)の内容を説明します。
厚生年金については別記事にて紹介します。
老齢基礎年金は、保険料を納めた期間と免除された期間の合計が10年以上ある場合、65歳になった時に支給されます。
※保険料免除期間とは、国民年金の第1号被保険者として加入期間のうち、保険料を納めることを免除された期間のことを言います。
全額免除、4分の1納付、半額納付、4分の3納付があります。
支給開始年齢
原則として65歳より支給
ただし、繰上げ支給や繰り下げ支給を行なうことで60歳からの支給、または70歳からの支給も可能です。
年金額 2022年4月分より(令和4年4月)
国民年金は満額で777,800円です。月額では64,816円。そこから保険料を支払っていない月数を引いて計算します。
2022年度(月額) | |
---|---|
国民年金額(満額1人分) | 64,816円 |
年金は偶数月ごと2ヶ月分ずつまとめて銀行口座に振り込まれます。
1円未満の端数が生じた場合は切り捨て、切り捨てた端数の合計額を2月期の支払額に加算して支払います。
免除対象期間がある場合
老齢基礎年金の計算方法は、免除対象期間があるかどうかで異なります。
免除対象期間がある場合、それぞれ以下のように計算します。
※ただし平成21年3月分までは、全額免除は6分の2、4分の1納付は6分の3、半額納付は6分の4、4分の3納付は6分の5にて計算されます。
(例1)
サラリーマンの扶養となっていた女性(専業主婦で40年間加入済)
40年間加入であれば、満額の777,800円(年額)となる。
(例2)
自営業の男性で25年間加入(免除期間なし)
777,800×(25年×12ヶ月)÷(40年×12ヶ月)= 486,125円(年額)となる。
(例3)
20年納付期間、10年間の免除期間、1年間の半額納付あり
777,800×((20年×12ヶ月)+(5年×12ヶ月×4/8)+(1年間×12ヶ月×6/8)÷ 40年×12ヶ月)=452,096円(年額)となる。
年金を早めにもらう場合(繰上げ支給)
国民年金(老齢基礎年金)は原則65歳からでないと受取ることができません。ですが「繰上げ支給」という制度があり一番早くは60歳から年金を受取ることができます。
ですが、通常の年金額より大幅な減額となり、それが一生続きます。
請求時の年齢 | 請求月から65歳になる 月の前月までの月数 |
減額率 |
---|---|---|
60歳0ヶ月~11ヶ月 | 60ヵ月~49ヵ月 | 30.0%~24.5% |
61歳0ヶ月~11ヶ月 | 48ヵ月~37ヵ月 | 24.0%~18.5% |
62歳0ヶ月~11ヶ月 | 36ヵ月~25ヵ月 | 18.0%~12.5% |
63歳0ヶ月~11ヶ月 | 24ヵ月~13ヵ月 | 12.0%~ 6.5% |
64歳0ヶ月~11ヶ月 | 12ヵ月~ 1ヵ月 | 6.0%~ 0.5% |
減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数
(例1)
60歳になってすぐに支給を受けたい場合(国民年金40年支払い済)
60歳になってすぐなので65歳になる前まではまだ60ヶ月あります。
・60ヶ月×0.5=30%
・777,800円より30%の減額になるので、支給額は544,460円(年額)になります。
⇒777,800円より233,340円(年額)少なくなります。そしてこの減額された年金が一生続くことになります。
繰上げした場合としていない場合との比較
年金を早めにもらえばそれだけ生活が楽になります。
しかし、その後は一生減額された年金で生活しなければなりません。
では、その分岐点は何歳くらいになるのでしょうか?
65歳から受けた場合と、繰り上げ支給を60歳から受けた場合とで比較してみます。
※基準となる年金額(2022年度)の満額777,800円
左側:65歳からの受給
右側:60歳からの受給(30%減額)
それぞれ総合計額での計算
年齢 | 65歳からの 年金受給額 |
合計額 | 60歳からの 年金受給額 |
合計額 |
---|---|---|---|---|
60 | 544,460円 | 544,460円 | ||
61 | 544,460円 | 1,089,060円 | ||
62 | 544,460円 | 1,633,520円 | ||
63 | 544,460円 | 2,177,980円 | ||
64 | 通常通り65歳から受けとる場合 | 544,460円 | 2,722,440円 | |
65 | 777,800円 | 777,800円 | 544,460円 | 3,266,900円 |
66 | 777,800円 | 1,555,600円 | 544,460円 | 3,811,360円 |
67 | 777,800円 | 2,333,400円 | 544,460円 | 4,355,820円 |
68 | 777,800円 | 3,111,200円 | 544,460円 | 4,900,280円 |
69 | 777,800円 | 3,889,000円 | 544,460円 | 5,444,740円 |
70 | 777,800円 | 4,666,800円 | 544,460円 | 5,989,200円 |
71 | 777,800円 | 5,444,600円 | 544,460円 | 6,533,660円 |
72 | 777,800円 | 6,222,400円 | 544,460円 | 7,078,120円 |
73 | 777,800円 | 7,000,200円 | 544,460円 | 7,622,580円 |
74 | 777,800円 | 7,778,000円 | 544,460円 | 8,167,040円 |
75 | 777,800円 | 8,555,800円 | 544,460円 | 8,711,500円 |
76 | 777,800円 | 9,333,600円 | 544,460円 | 9,255,960円 |
※繰上げした場合、75歳までは得になりますが、76歳を過ぎた場合は逆転しています。
2020年の調査では、男性の平均寿命が81.64歳。女性が87.74歳です。
平均寿命まで生きた場合は大幅な減額になります。
<<男性で81歳まで年金を受け取った場合>>
年齢 | 65歳~ | 60歳繰り上げ | 差 |
---|---|---|---|
81歳時点 | 13,222,600円 | 11,978,120円 | 1,244,480円 |
<<女性で87歳まで年金を受け取った場合>>
年齢 | 65歳~ | 60歳繰り上げ | 差 |
---|---|---|---|
87歳時点 | 17,889,400円 | 15,244,880円 | 2,644,520円 |
男性の場合で約124万、女性の場合で264万円の差が生じます。
年金受け取りを遅らせる(繰り下げ支給)
繰上げではなく、繰下げすることも可能です。
原則65歳から年金を受けられますが、まだ預貯金に余裕がある場合などに有利です。
繰下げの場合、以下のメリットがあります。
請求時の年齢 | 増額率 |
---|---|
66歳~ | 108.4%~ |
67歳~ | 116.8%~ |
68歳~ | 125.2%~ |
69歳~ | 133.6%~ |
70歳~ | 142.0%~ |
71歳~ | 150.4%~ |
72歳~ | 158.8%~ |
73歳~ | 167.2%~ |
74歳~ | 175.6%~ |
75歳~ | 184.0% |
繰下げた場合は、最高で184%の増額率となります。
(例1)
満額受給できる場合で70歳から年金を受取る場合
777,800×142%=1,104,476円
1,104,476円となり、年間326,676円得することになります。
さいごに
国民年金は満額でも777,800円です。40年間払い続けても年間777,800円しかもらえません。
月額で言えば、64,816円です。
国民年金は繰上げも可能なので60歳から受け取ることもできます。
しかし文中で説明したとおり受け取れる額も少なくなるため、難しいところです。
会社勤めが長い人であれば、厚生年金(老齢厚生年金)も受け取れるので倍以上の年金額になるケースが多いです。ですが厚生年金が受け取れない場合、65歳過ぎてからはこの年金で生活していかなければなりません。
そのためには十分な貯蓄や他の収入源が必要になります。
生活保護費が約12万円程なのに対してこれではあまりにも少ない額です。
繰上げも繰下げも実際に計算してから検討した方がよいでしょう。