パートで働く主婦(主夫)にとって、「いくらまで働けば損をしないのか?」は永遠のテーマです。
特に気になるのが「106万円の壁」と「130万円の壁」。これらを超えると社会保険に加入する必要があり、手取りが大きく減ってしまうケースがあります。
「130万円を少しだけ超えてしまったけど、どれくらい損するの?」「106万円の壁は自分にも関係あるの?」「社会保険に加入するメリットって本当にあるの?」こうした疑問を持つ方は少なくありません。
この記事では、2026年1月時点の最新制度をもとに、パートの社会保険加入条件、実際の負担額、そして意外と知られていないメリットまで、判断に必要な情報をすべて解説します。
■目次
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パート収入の「壁」とは|103万・106万・130万の違い
パート収入には、いくつかの「壁」が存在します。それぞれ意味が異なるため、まず整理しておきましょう。
103万円の壁(所得税の壁)→150万円に拡大
以前は「103万円の壁」がよく話題になりました。これは、妻のパート収入が103万円を超えると所得税がかかり、夫が配偶者控除を受けられなくなるというものでした。
しかし現在は、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しにより、給与収入150万円までは控除額が満額(配偶者控除と同額)になるしくみになっています。
注意:ここは税金(所得税・住民税)の話であり、次に解説する「106万円・130万円(社会保険の扶養)」とは別の判定です。税の控除が残っていても、社会保険は扶養から外れることがあります。
106万円の壁(社会保険の壁・条件付き)
一定の条件を満たす勤務先で働いている場合、年収106万円以上で社会保険への加入義務が発生します。
この「一定の条件」が重要で、すべてのパート労働者に適用されるわけではありません。詳細は後述します。
130万円の壁(社会保険の壁・全員対象)
年収130万円以上になると、勤務先の規模に関係なく、社会保険への加入が必須となります。
この壁を超えると、配偶者の扶養から外れ、自分で健康保険料と厚生年金保険料を負担することになります。
収入別の税金・保険料負担の全体像

上記の図のとおり、社会保険加入の分岐点は106万円と130万円です。どちらが適用されるかは、勤務先の規模と労働条件によって決まります。
106万円の壁|誰が対象?5つの条件
「106万円の壁」は、すべてのパート労働者に適用されるわけではありません。以下の5つの条件すべてを満たす場合のみ、年収106万円以上で社会保険への加入が必要になります。
社会保険加入が必要となる5つの条件
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上(年収換算で約106万円以上)
- 2ヶ月を超えて雇用される見込みがある
- 学生でないこと(休学中や夜間・定時制は除く)
- 従業員数が51人以上の企業で働いている
重要なポイント:この5つの条件をすべて満たす場合のみ、勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入します。満たさない場合は、原則として「扶養に入れるかどうか」は130万円基準(扶養判定)に戻ります(年収130万円未満なら扶養のままでいられる可能性があります)。
106万円の壁が適用されないケース(具体例)
- 従業員数が50人以下の小規模事業所で働いている → 106万円の加入要件の対象外。扶養判定は原則として130万円基準へ(年収130万円未満なら扶養の可能性)
- 週の労働時間が19時間以下 → 106万円の加入要件の対象外。扶養判定は原則として130万円基準へ(年収130万円未満なら扶養の可能性)
- 月額賃金が8.8万円未満(年収106万円未満) → 106万円の加入要件に該当しない(この時点で社会保険加入は原則不要)
- 雇用期間が2ヶ月以内の短期契約 → 社会保険加入不要
つまり、小規模な会社や個人経営の店舗で働いている場合、106万円の壁は関係なく、基本は130万円の壁(扶養から外れる基準)を気にすればよいということです。
2024年10月に適用範囲が拡大されました
2024年10月から、対象企業の規模が「従業員101人以上」から「51人以上」に拡大されました。
これにより、以前は106万円の壁が適用されなかった中小企業でも、現在は社会保険加入が必要になっているケースが増えています。ご自身の勤務先が対象かどうか、必ず確認しておきましょう。

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130万円の壁|全員に適用される基準
年収が130万円以上になると、勤務先の規模に関係なく、社会保険への加入が必須となります。
※なお、勤務時間が正社員のおおむね4分の3以上など、働き方によっては収入に関係なく勤務先の社会保険の加入対象になることがあります(ここでは、主に「扶養に入れるかどうか」で迷うケースを想定しています)。
130万円の壁の判定基準
130万円の判定は、「向こう1年間の収入見込み」で判断されます。つまり、過去の実績ではなく、今後の収入予測で判断されるという点に注意が必要です。
よくある誤解:「今年の1月〜12月の合計が130万円を超えたら扶養を外れる」と思われがちですが、実際には「月収が約10.8万円(130万円÷12ヶ月)を継続的に超える状態」になった時点で扶養を外れる必要があります。
※「収入」に通勤手当(交通費)が含まれるか、繁忙期の一時的な収入増をどう扱うかは、加入している健康保険組合等の運用で差が出ることがあります。迷う場合は、加入先(配偶者の健康保険組合/協会けんぽ等)に確認するのが確実です。
130万円の壁を超えた場合の対応
年収が130万円を超えた場合、以下の対応が必要です。
- 配偶者の健康保険の扶養から外れる手続きを行う
- 勤務先の社会保険に加入する、または国民健康保険・国民年金に加入する
- 自分で健康保険料と年金保険料を負担する
※勤務先に社会保険がない場合は、国民健康保険と国民年金に加入することになります。
社会保険に加入するといくら負担が増える?
「壁を超えたら、実際いくら払うの?」これが最も気になるポイントです。具体的な金額を見ていきましょう。
※社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、会社と個人で折半して支払います。
※40歳以上の方は、介護保険料も健康保険料に含めて支払います。
※ここで示す金額は、給与から天引きされる本人負担分(折半後)の目安です。所得税・住民税などは別途かかります。
月収9万円(年収108万円)の場合の社会保険料
106万円の壁を超えた場合
- 健康保険料(介護保険料込・40歳以上):個人負担 約5,200円
- 厚生年金保険料:個人負担 約8,052円
- 合計:約13,252円(月収の約14.7%)
年間負担額:約159,000円
手取りの変化:月収9万円の場合、社会保険料を引かれると手取りは約76,700円になります。扶養内で働いていた場合と比べて、年間で約16万円の負担増となります。
月収11万円(年収132万円)の場合の社会保険料
130万円の壁を超えた場合
- 健康保険料(介護保険料込・40歳以上):個人負担 約6,490円
- 厚生年金保険料:個人負担 約10,065円
- 合計:約16,555円(月収の約15%)
年間負担額:約198,000円
参考:月収20万円(年収240万円)の場合
- 健康保険料(介護保険料込・40歳以上):個人負担 約11,800円
- 厚生年金保険料:個人負担 約18,300円
- 合計:約30,100円(月収の約15%)
年間負担額:約361,000円
※上記は東京都の2025年度(令和7年度)の概算額です。都道府県や年度によって健康保険料率が異なります。
損益分岐点の目安:一般的に、年収150万円以上で働かないと、社会保険料の負担によって手取りが扶養内で働いていた場合を下回る可能性があります。「少しだけ壁を超える」のは、手取りの面では不利になりやすいのです。
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社会保険に加入するメリット|負担だけじゃない
「社会保険料を払うのは損」と思われがちですが、実は大きなメリットもあります。特に将来の年金額や、万が一のときの保障を考えると、決して無駄ではありません。
メリット①:将来の年金が増える(厚生年金)
配偶者の扶養に入っている場合、加入しているのは「国民年金」のみです。
社会保険に加入すると「厚生年金」にも加入することになり、将来受け取れる年金が2階建てになります。
- 1階部分:国民年金(老齢基礎年金)
- 2階部分:厚生年金(老齢厚生年金)
具体例:月収10万円で10年間厚生年金に加入した場合、65歳から受け取れる年金が年間で約6.6万円増える計算になります(2025年度水準で試算)。
長い目で見れば、支払った保険料以上のリターンが期待できるケースも多いのです。
メリット②:病気やケガで働けなくなったときの保障(傷病手当金)
健康保険に加入していると、病気やケガで仕事を休んだ場合、傷病手当金を受け取ることができます。
扶養に入っている場合(国民健康保険を含む)は、この制度は利用できません。会社の健康保険に加入している人だけの特権です。
支給額:標準報酬月額の約3分の2が、最長1年6ヶ月支給されます。
メリット③:障害を負ったときの保障が手厚い(障害厚生年金)
万が一、病気やケガで障害の状態になった場合、厚生年金に加入していれば障害厚生年金を受け取ることができます。
- 障害等級1級・2級:障害基礎年金+障害厚生年金の両方を受給
- 障害等級3級:障害厚生年金のみ受給(国民年金のみの場合は3級では受給できない)
国民年金だけの場合、障害等級3級では年金が受け取れませんが、厚生年金に加入していれば3級でも年金を受け取れます。
メリット④:出産時の手当が充実(出産手当金)
会社の健康保険に加入していると、産前産後休業中に出産手当金を受け取ることができます。
支給額:標準報酬月額の約3分の2が、産前42日+産後56日分支給されます。
※扶養に入っている場合や国民健康保険では、この制度は利用できません。
社会保険とは|4つの保険の役割
そもそも「社会保険」とは何かを改めて整理しておきましょう。
社会保険とは、以下の4つの保険の総称です。
- 健康保険:病気やケガの医療費を保障(介護保険を含む)
- 厚生年金保険:老後の生活、障害や死亡時の保障
- 雇用保険:失業時の生活保障、職業訓練の支援
- 労災保険:仕事中や通勤中のケガ・病気の保障
これらの保険料を支払う目的は「相互扶助」、つまり日本に住む人全員で支え合う仕組みです。
社会保険料が増え続けている理由
日本では社会保障関係費が年々増加しています。原因は少子高齢化です。

出典:財務省
社会保険料だけでは費用を賄いきれず、税金や国の借金に頼っている状態です。
このため、政府は社会保険の加入対象を広げ、より多くの人に保険料を負担してもらう方向で制度改正を進めています。106万円の壁の対象拡大も、その一環です。
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結局どう働くのが得?判断のポイント
「結局、自分はいくらまで働けばいいの?」という疑問に対して、万人に共通する正解はありません。ただし、判断の基準はあります。
判断基準①:目先の手取りを優先するなら
扶養内(年収130万円未満)で働くのが最も手取りが多くなります。
特に、106万円〜150万円の範囲で働くと、社会保険料の負担だけが発生し、手取りが減ってしまいます。
判断基準②:将来の年金や保障を重視するなら
年収150万円以上を目指すのが合理的です。
社会保険料を支払っても手取りが扶養内を上回り、かつ将来の年金額も増え、病気やケガのときの保障も手厚くなります。
判断基準③:「少しだけ壁を超える」のは避ける
年収が106万円〜130万円の範囲、または130万円〜150万円の範囲で働くと、社会保険料の負担によって手取りが逆転する可能性があります。
壁を超えるなら、中途半端ではなく、しっかり150万円以上を目指す方が賢明です。
ライフステージに応じた選択を
- 子どもが小さいうちは扶養内で働き、家庭を優先
- 子どもが成長したら時間を増やし、年収150万円以上を目指す
- 将来の年金を増やしたいなら、早めに社会保険に加入する
どの選択肢が正解かは、ご家庭の状況や価値観によって異なります。この記事を参考に、ご自身にとってベストな働き方を見つけてください。
まとめ|パートの社会保険で押さえるべき3つのポイント
- 106万円の壁は条件付き、130万円の壁は全員対象
勤務先の規模や労働時間によって、どちらの壁が適用されるかが変わります。ご自身の勤務先が対象かどうか確認しましょう。 - 壁を超えると社会保険料の負担が発生する
月収の約15%が社会保険料として引かれます。ただし、年収150万円以上で働けば、手取りは扶養内を上回ります。 - 社会保険には将来のメリットもある
年金が増える、病気やケガの保障が手厚い、出産時の手当が充実するなど、長期的にはメリットも大きいのです。
目先の手取りだけでなく、将来の保障や年金も含めて、総合的に判断することが大切です。
よくある質問
Q1. 106万円の壁と130万円の壁、どちらが自分に適用されるかわかりません
A. 勤務先の従業員数が51人以上で、週20時間以上・月収8.8万円以上で働いている場合は106万円の壁が適用されます。従業員数が50人以下の場合は106万円の加入要件の対象外で、扶養に入れるかどうかは原則として130万円基準で判断されます。勤務先の総務や人事部に確認するのが確実です。
Q2. 年収が130万円を少しだけ超えてしまった場合、すぐに扶養を外れる必要がありますか?
A. 一時的な収入増加(繁忙期の残業など)であれば、すぐに扶養を外れる必要はありません。判定基準は「向こう1年間の収入見込み」です。継続的に月収10.8万円を超える状態になった場合に、扶養を外れる必要があります。通勤手当(交通費)を含めるかなどは加入先の運用で差があるため、迷う場合は加入先に確認してください。
Q3. 社会保険に加入すると、結局どれくらい損するのですか?
A. 年収106万円〜150万円の範囲で働く場合、社会保険料の負担により手取りが減ります。ただし、年収150万円以上で働けば、手取りは扶養内を上回る可能性が高くなります。また、将来の年金増加や病気・ケガの保障を考えると、長期的には必ずしも「損」とは言い切れません。
Q4. パート先に社会保険がない場合はどうなりますか?
A. 年収130万円を超えた場合、配偶者の扶養から外れ、国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。この場合、保険料は全額自己負担となり、会社の健康保険のような傷病手当金や出産手当金の制度はありません。
Q5. 社会保険料は毎月いくら引かれますか?
A. 給与額によって異なりますが、月収10万円の場合は約14,000円〜15,000円(月収の約15%前後)が目安です。40歳以上の方は介護保険料も含まれるため、さらに負担が増えます。
Q6. 厚生年金に加入すると、将来の年金はどれくらい増えますか?
A. 月収10万円で10年間厚生年金に加入した場合、65歳から受け取れる年金が年間で約6.6万円増える計算になります。加入期間が長いほど、受給額も増えます。
Q7. 2024年10月からの変更で、自分も106万円の壁の対象になりますか?
A. 2024年10月から、対象企業の規模が「従業員101人以上」から「51人以上」に拡大されました。以前は130万円の壁だけを気にすればよかった方も、現在は勤務先の従業員数次第では106万円の壁が適用される可能性があります。