「うつ病で働けなくなった。貯金も減ってきた。障害年金って、自分でも申請できるんだろうか」
結論から言えば、うつ病でも障害年金を受け取ることは可能です。それどころか、いま障害年金の新規受給者のうち最も多いのが、うつ病や適応障害などの精神疾患です。
ただし、2026年の調査では、障害年金の申請から受給決定まで平均192日(約半年)かかると言われています。しかも審査で落とされる確率は年々上がっています。
※「平均192日」というデータは、初診日の証明が取れず1年以上難航したような極端なケースを含むため平均が引き上げられています。年金機構の標準処理期間は約3.5ヶ月であり、診断書作成期間を含めても、スムーズにいけば「実際には3〜6ヶ月程度で結果が出るケースが多い」です。
この記事では、うつ病で障害年金を受けるために知っておきたいことをまとめました。制度の基本から、いくら受け取れるのか、なぜ半年もかかるのか、審査で落ちないための対策等を解説しています。
■目次
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うつ病でもらえる障害年金は2種類ある
障害年金は、初めてうつ病で病院にかかった日(初診日)にどの年金制度に加入していたかによって、もらえる年金の種類が変わります。
障害基礎年金(国民年金に加入していた方)
- 自営業、専業主婦(主夫)、学生、無職だった方が対象
- 1級と2級だけが対象(3級はなし)
- 金額は定額(収入に関係なく全員同じ)
障害厚生年金(厚生年金に加入していた方)
- 会社員・公務員だった方が対象
- 1級・2級・3級の3段階(基礎年金より受給のハードルが低い)
- 金額は基礎年金+報酬比例(現役時代の給料が高かった人ほど多くなる)
「初診日」の落とし穴に注意
ここでいう初診日とは「うつ病と診断された日」ではありません。たとえば不眠の症状で内科を受診した日が、結果的にうつ病の初診日として扱われることがあります。
いくらもらえる?2026年度の受給額
障害基礎年金の金額
| 等級 | 月額 | 年額 |
|---|---|---|
| 1級 | 88,260円 | 約105.9万円 |
| 2級 | 70,608円 | 約84.7万円 |
1級は2級の1.25倍です。
障害厚生年金の金額
| 等級 | 内容 |
|---|---|
| 1級・2級 | 障害基礎年金(上の表)+報酬比例額(過去の給与によって変動) |
| 3級 | 報酬比例額のみ(最低保障:月額52,958円=年額約63.6万円) |
会社員だった方は基礎年金に上乗せがつくため、2級でも月10万円以上になるケースがあります。
さらに「障害年金生活者支援給付金」が上乗せされる
障害年金を受給していて所得が479.4万円以下の方には、非課税の給付金がさらに加算されます。うつ病で受給している方の大半がこの条件に該当します。
| 等級 | 給付金の月額(2026年度) |
|---|---|
| 1級 | 7,025円 |
| 2級 | 5,620円 |
2級の場合、年金本体70,608円+給付金5,620円=月額76,228円が毎月の収入になります。
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うつ病の等級はどうやって決まるのか
「マトリックス表」で目安が判定される
障害年金の等級は、医師が作成する診断書に記載された2つの指標をもとに、まず機械的な「目安」が算出されます。
診断書の2つの指標
- 日常生活能力の判定(7項目・4段階)→ 平均点を算出
- 日常生活能力の程度(5段階)→ 全体的な状態を評価
この2つを掛け合わせた表(マトリックス表)で、「1級」「2級」「3級」の目安が導き出されます。
各等級の状態イメージ
| 等級 | うつ病の場合の状態イメージ |
|---|---|
| 1級 | ほぼ寝たきり。入浴・食事・金銭管理など、日常のほとんどに他人の助けが必要 |
| 2級 | 自宅に引きこもりがち。食事の支度や入浴が自力では難しく、就労はとてもできる状態ではない |
| 3級 | 身の回りのことは何とかこなせるが、働くことには大きな制限がある(厚生年金のみ対象) |
「半年待ち」の現実。申請から受給決定まで平均192日
うつ病に特化した社労士法人(全国障害年金パートナーズ)が、支給決定者524名を対象に行った調査で、以下の数字が判明しています。
手続きにかかる期間の内訳
| プロセス | 平均日数 | 最長記録 |
|---|---|---|
| 診断書の作成期間 | 62.4日 | 535日(約1年半) |
| 年金機構での審査期間 | 89.8日 | 314日(約10ヶ月) |
| 合計(依頼〜支給決定) | 192.2日(約半年) |
これは専門家がフルサポートした場合の数字です。
正確に言えば、極端なケースを含むため平均期間が引き上げられています
社労士に高額な報酬を払って依頼する人は少数派であり、実際には「自分自身や家族、病院のソーシャルワーカー(MSW)等と相談しながら自力で申請する人」が圧倒的多数派です。専門家を使うのは、「初診日のカルテが破棄されていて自力では困難な人」や「絶対に1発で審査を通したい(絶対に失敗したくない)人」など、明確な理由がある層に限られます。
なぜこんなに時間がかかるのか
前半のボトルネック:診断書の作成(平均62日)
- 精神科医も通常の診療の合間に書くため、1〜2ヶ月はかかる
- 「年金をもらうと社会復帰の妨げになる」と考え、作成に消極的な医師もいる
- 転院歴がある場合は以前の病院への照会が必要になり、さらに時間がかかる
後半のボトルネック:年金機構での審査(平均89.8日)
- 精神疾患の審査はすべて東京の一カ所に集約されており、処理が追いついていない
- 審査の途中で追加書類を求められ、数ヶ月単位で遅れることもある
- 精神障害の申請件数は全疾患の中で最も多く、認定医の処理能力が限界に近い
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審査はますます厳しくなっている
時間がかかるだけではありません。審査で落とされる確率(不支給率)も急上昇しています。
不支給率の推移
| 年度 | 全体の不支給率 |
|---|---|
| 令和5年度 | 8.4% |
| 令和6年度 | 13.0%(急上昇) |
精神疾患はとくに厳しい
さらに深刻なデータがあります。精神障害で不支給となった85件を分析したところ、次のことがわかりました。
不支給になった人の75.3%は、ガイドラインの目安を満たしていた
数字の上では「2級相当」に該当するにもかかわらず、認定医の総合的な判断で落とされたということです。
ガイドラインの目安をクリアしていても安心はできない。それが、いまの審査の実態です。
うつ病の申請で最もつまずく「3つのハードル」
ハードル①:初診日が証明できない
障害年金は初診日を起点にすべてが動きます。ところがうつ病の場合、最初は不眠で内科にかかり、何年か経ってようやく精神科を受診し、さらに時間が経ってから障害年金の存在を知る。そんなケースが非常に多いのです。
問題は、医療機関のカルテ保存義務が5年しかないこと。5年以上前の受診だと「カルテは廃棄しました」「クリニックは閉院しました」と言われてしまい、初診日を証明する手がかりが失われます。
【カルテがない場合の代替手段】
- 当時の医師・看護師による「第三者証明」(最も証拠力が高い)
- 診察券のコピー、領収書、お薬手帳
- 障害者手帳の交付記録、公費負担の受給記録
これらをパズルのように組み合わせて、「この日に確かに受診していた」と立証していくことになります。
ハードル②:主治医が診断書を書いてくれない
精神科医の中には、年金を受給すると患者が社会復帰を諦めてしまうのではないかと懸念し、診断書の作成を断る医師がいます。あるいは、あえて実態より軽く書く医師もいます。
【医師に日常の困難を正確に伝える方法】
- 入浴の頻度、食事の準備ができない、ゴミを出せないなどを箇条書きのメモにする
- 診察のたびにそのメモを手渡す(口頭だけでは伝えきれない)
- それでも協力が得られない場合は、年金申請に理解のある医療機関への転院も選択肢
ハードル③:自分ひとりで手続きを進めるのが難しい
うつ病で気力も判断力も落ちているときに、何十枚もの書類を集め、年金事務所とやりとりするのは並大抵のことではありません。
| 自分で申請する場合 | 社労士に依頼する場合 | |
|---|---|---|
| メリット | 費用がかからない | 審査を通すためのノウハウがある |
| デメリット | 書類の不備で不支給になるリスクが高い | 着手金+成功報酬が発生する |
| 就労中の申請 | 「働けている」と判断され落ちやすい | 「配慮を受けてかろうじて就労している」と正確に伝える技術がある |
| 費用の目安 | 0円 | 着手金0〜5万円+成功報酬(年金2ヶ月分 or 初回振込額の10〜15%) |
社労士への依頼費用は安くはありません。ただ、障害年金は一度認定されれば毎年70〜100万円以上が支給される制度です。自分で申請して不支給になった場合に失うのは、数百万円から数千万円にのぼる生涯受給額です。その天秤で考えれば、専門家への依頼は合理的な選択になり得ます。
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申請の5ステップ
【うつ病で障害年金を申請する手順】
- 初診日の特定と証明の確保:最初に受診した病院で「受診状況等証明書」を出してもらう
- 保険料の納付要件を確認:年金事務所で、保険料の未納がないかチェック(ここをクリアしないと先に進めない)
- 主治医に診断書を依頼:日常の困りごとを書いたメモを添えて依頼する
- 病歴・就労状況等申立書を作成:発病から現在までの経緯と、生活上の困難を自分の言葉で記載する
- 年金事務所に提出:すべての書類を揃えて提出し、審査結果を待つ(審査に平均89.8日)
半年間の待機中、生活費はどうする?
うつ病で働けない状態で生活費をどう確保するか。これは多くの方にとって切実な問題です。
①傷病手当金(会社員の場合)
健康保険から、休職中の給与の約3分の2が最長1年6ヶ月にわたって支給されます。障害年金は「初診日から1年6ヶ月後」にならないと請求できないため、その空白期間を埋めてくれる頼もしい制度です。
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②自立支援医療(誰でも使える)
精神科への通院費と薬代の自己負担が3割から1割に軽減されます。障害年金の申請中でもすぐに利用できるので、まだ申請していない方は早めに手続きしておきましょう。
お住まいの市区町村の窓口(障害福祉課など)で申請します。主治医に専用の「診断書」を書いてもらう必要があり、申請から手元に受給者証が届くまで1〜2ヶ月かかります。ただし、申請したその日から1割負担が適用される(後日精算される)自治体が多いです。
③生活保護との併用
あまり知られていませんが、生活保護を受けながら障害年金を申請・受給することは、法律上まったく問題ありません。
年金が支給されるとその分だけ保護費は差し引かれます。ただし、障害年金(1級・2級)を受けていると生活保護に「障害者加算」がつくため、生活保護だけの場合よりも手元に残るお金が増えるケースがあります。
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よくある3つの誤解
誤解①:「うつ病では障害年金はもらえない」
事実ではありません。いま、障害年金の新規受給者のうち最も多いのが精神疾患です。更新(再認定)を含めると、受給者全体の約8割が精神・知的障害のカテゴリーに該当します。正しい手続きと根拠を揃えれば、受給は十分に可能です。
誤解②:「働いていたら絶対にもらえない」
これも事実ではありません。精神障害で障害年金を受給している人のうち、34.8%が何らかの形で働いています。審査で問われるのは「働けているかどうか」ではなく、「どの程度の配慮を受けて、どれだけぎりぎりの状態で働いているか」です。
誤解③:「一度落ちたら二度と申請できない」
そんなことはありません。不支給になっても、症状が悪化すれば65歳になるまでいつでも再申請(事後重症請求)ができます。一度の結果で諦める必要はないのです。
まとめ
この記事のポイント
- うつ病でも障害年金はもらえる。いま受給者で最も多いのが精神疾患
- 2026年度は2級で月額70,608円+給付金5,620円=月約76,000円
- 診断書の作成に平均62日、年金機構の審査に平均89.8日
- 不支給率は急上昇中(令和6年度:13.0%)。ガイドラインの目安を満たしていても75.3%が落とされている
- 最大のハードルは「初診日の証明」。カルテの保存期限は5年
- 働きながらでも受給は可能(受給者の34.8%が就業中)
- 社労士への依頼は着手金0〜5万円+成功報酬が相場
- 待機中の生活は、傷病手当金・自立支援医療・生活保護をフル活用して守る
- 一度不支給でも65歳まで再申請できる(事後重症請求)
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よくある質問(FAQ)
Q. うつ病で障害年金を申請するのに、最低限必要な書類は何ですか?
A. 主なものは、①年金請求書、②医師の診断書(精神の障害用)、③受診状況等証明書(初診日の証明)、④病歴・就労状況等申立書、⑤住民票、⑥通帳のコピーです。初診日からかなりの年数が経っている場合は、③の代わりに第三者証明や参考資料を求められることがあります。
Q. 初診日が10年以上前でカルテが残っていません。もう申請はできませんか?
A. カルテがなくても道はあります。当時の医師や看護師による第三者証明、診察券、領収書、お薬手帳、障害者手帳の交付記録など、複数の資料を組み合わせて初診日を証明できるケースは少なくありません。社労士に相談すれば、一緒に代替手段を探してもらえます。
Q. 障害年金の審査に落ちたら、不服申し立てはできますか?
A. できます。決定を知った翌日から3ヶ月以内に「審査請求」を行い、それでも棄却された場合は「再審査請求」も可能です。ただし、認められる割合は1割に届かない程度と非常に低いため、初回の申請でしっかり書類を整えることが何より重要です。
Q. 障害年金をもらうと確定申告は必要ですか?
A. 必要ありません。障害年金は全額非課税のため、所得税も住民税もかかりません。確定申告の収入に含める必要もありません。
Q. 受給が決まったら、いつから振り込まれますか?
A. 支給決定から1〜2ヶ月後に初回の振り込みがあります。初回には、障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月後)まで遡った分がまとめて入金されるため、数十万円から100万円を超える金額になることもあります。
Q. 障害年金をもらっている間に症状が良くなったら、打ち切られますか?
A. 障害年金には1〜5年ごとの「更新(再認定)」があります。更新時に提出する診断書の内容をもとに、症状が改善したと判断されれば等級が下がったり、支給が止まったりすることはあります。ただし、その後ふたたび悪化した場合は支給の再開を求めることができます。
参考・出典
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」
- 日本年金機構「障害年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」
- 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
- PR TIMES「うつ病の障害年金、専門家のサポートでも『半年待ち』申請の実態」
- ファーリア社労士法人「令和8年度版 障害年金はいくらもらえる?」
- 「障害年金は働きながらでも受給可能!就労との両立を社労士が徹底解説」




