生活保護 介護 役に立つ雑学

介護施設はどう選ぶ?6種類の違い・費用・年金での入り方を解説

「介護施設、どれを選べばいいのか全然わからない」

特養、老健、グループホーム、有料老人ホーム、サ高住。名前だけは聞いたことがあるけれど、何がどう違うのか。お金はいくらかかるのか。年金だけで払えるのか。夜中にスタッフはちゃんといるのか。

介護施設を探し始めると、不安が次から次へと出てきます。ネットで調べても情報がバラバラで、結局どこが自分の親に合うのかわからない。そんな方は決して少なくありません。

この記事では、よく名前が出てくる介護施設6種類について、向いている人・入居条件・費用の内訳・メリットとデメリット・年金で払えるか・生活保護でも入れるか・夜のスタッフ人数まで、1つの記事にまとめました。全体像をつかんで、「うちにはどこが合いそうか」を自分で判断できるようになることを目指しています。

■目次

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まずは全体像。介護施設は大きく「公的」と「民間」に分かれる

「そもそもどのような施設があるのか」から見ていきましょう。

介護施設は種類が多くて混乱しますが、まず押さえるべきは「公的施設」と「民間施設」という大きな分類です。

公的施設は、国や自治体が関わって運営している施設です。最大の特徴は、入居時にまとまったお金(入居一時金)がかからないこと。月々の費用も比較的安く、収入が少ない人への減免制度も充実しています。代表的なのが特養(特別養護老人ホーム)老健(介護老人保健施設)の2つです。

民間施設は、民間の会社や法人が運営している施設です。サービスの内容や部屋のグレードによって費用が大きく変わり、月8万円台から30万円近くまで幅があります。代表的なのは介護付き有料老人ホーム住宅型有料老人ホームサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)グループホームの4つです。

この記事で取り上げる6施設を、まずはひと目で比較できる表にまとめました。

施設名 運営 入居一時金 月額費用 入居条件 向いている人
特養 公的 なし 10万〜14.4万円 原則 要介護3以上 費用を抑えて長期入居したい人
老健 公的 なし 8.8万〜15.1万円 要介護1以上 リハビリして自宅に戻りたい人
介護付き有料 民間 0〜1,380万円 14.5万〜29.8万円 施設による すぐ入居したい・しっかり介護してほしい人
住宅型有料 民間 0〜380万円 8.8万〜19.1万円 施設による まだ元気だけど安心できる住まいがほしい人
サ高住 民間 0〜27万円 11.1万〜20万円 60歳以上 自由な暮らしを続けたい自立高齢者
グループホーム 民間 0〜16万円 8.3万〜13.8万円 要支援2以上+認知症 少人数で認知症ケアを受けたい人

ここからは、この6施設をひとつずつ詳しく見ていきます。まずは公的施設の2つからです。

公的施設2種類:費用を抑えたい人の第一候補

まずは公的施設から。公的施設の一番のメリットは、入居時にまとまったお金(入居一時金)を払わなくていいことです。毎月の費用も、収入が少ない人には割引(減免)が効きやすい仕組みになっています。

代表的な公的施設は「特養」と「老健」の2つです。名前は似ていますが、役割はまったく違います。

特別養護老人ホーム(特養):最期まで暮らす「終の棲家」

どんな人に向いているか

自力でトイレや入浴ができなくなり、24時間だれかの助けが必要な状態の方。「この先、自宅に戻るのは難しい」という段階に来ていて、長期的に安定した場所で暮らしたい方に最も向いています。

たとえば、認知症が進んで夜間の徘徊が頻繁になり、家族が限界を迎えているケース。あるいは、一人暮らしの親が転倒を繰り返して、在宅での生活がもう成り立たなくなったケース。こうした「在宅の限界」を迎えた方が最終的にたどり着く施設です。

入居条件

原則として要介護3以上。要介護1・2でも、認知症で日常生活に支障がある場合や、家族の虐待がある場合などは特例で入所できることがあります。

費用の内訳

入居一時金はゼロ円です。毎月の費用は10万〜14.4万円が相場で、主な内訳は以下のとおりです。

  • 施設介護サービス費(介護保険の自己負担1〜3割):約2万〜3万円
  • 居住費(部屋代):ユニット型個室で約6万円、多床室で約2.5万円
  • 食費:約4.2万円
  • 日常生活費(理美容代・日用品など):約1万円

収入が少ない方は「負担限度額認定」を受けると、居住費と食費が大幅に減額されます。国民年金だけの方でも月5〜6万円程度まで抑えられる可能性があります。

メリット

  • 初期費用がかからない
  • 月額費用が6施設の中で最も安い
  • 低所得者向けの減免制度が充実している
  • 看取りまで対応してくれるので、何度も施設を変える必要がない
  • 24時間体制で介護・看護スタッフが常駐している

デメリット

  • 人気が高すぎて、申し込みから入居まで数ヶ月〜数年かかる
  • 原則要介護3以上なので、軽度の段階では入れない
  • 医療的ケア(点滴や痰の吸引など)の対応には施設差がある
  • 入居後の外出や生活の自由度は低め

介護老人保健施設(老健):自宅に戻るためのリハビリ施設

どんな人に向いているか

骨折や脳卒中で入院していたけれど、退院後すぐに自宅に戻るのは不安。リハビリをしてから自宅に戻りたい。そんな「病院と自宅の間の中継ぎ」が必要な方に向いています。

たとえば、転倒して大腿骨を骨折し、手術と入院を経て退院する75歳のお父さん。歩けるようにはなったけれど、まだ一人暮らしは不安定。こういう状況で3〜6ヶ月リハビリに集中するための施設です。

また、特養の順番を待つ間の「つなぎ」として利用するケースもあります。

入居条件

要介護1以上。特養と違い、要介護1・2の比較的軽度の方でも入所できます。医師の判断でリハビリが必要と認められることが条件です。

費用の内訳

入居一時金はゼロ円。毎月の費用は8.8万〜15.1万円が相場です。

  • 施設サービス費(介護保険の自己負担分):約2.5万〜3.5万円
  • 居住費:ユニット型個室で約6万円、多床室で約1.5万〜2.5万円
  • 食費:約4.2万円
  • 日常生活費:約0.5万〜1万円

特養と同様に「負担限度額認定」が使えるので、低所得者は居住費と食費を大きく抑えられます。

メリット

  • 初期費用がかからない
  • 理学療法士や作業療法士による本格的なリハビリが受けられる
  • 医師が常勤しているので、医療面での安心感がある
  • 特養より入りやすい(待機期間が短い傾向)

デメリット

  • 入所期間の目安が3〜6ヶ月で、ずっと住み続ける場所ではない
  • 「在宅復帰」が目的のため、状態が安定すると退所を求められる
  • 長期入所を前提にしている方には合わない
  • 施設によってリハビリの質や力の入れ具合にバラつきがある

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民間施設4種類:選択肢は広いけれど、費用の差が大きい

民間施設は、サービスや部屋のグレードによって費用がまったく違います。高級な施設だと入居一時金だけで1,000万円を超えることもあれば、初期費用ゼロ円で入れるところもあります。

大事なのは、「民間=高い」とは限らないこと。公的施設に入れない事情がある方でも、民間施設の中に手の届く選択肢が見つかることはあります。

介護付き有料老人ホーム:24時間スタッフ常駐の安心感

どんな人に向いているか

「特養に入りたいけど何年も待てない」「お金はある程度出せるから、すぐに入れてしっかり介護してもらえるところがいい」という方に向いています。

たとえば、認知症が進行して在宅介護が限界になったけれど、特養の順番は数年先。それまで待てない。でも貯金はある。そんな状況で「特養の代わり」として選ばれることが多い施設です。

特養と同じように24時間体制で介護スタッフが常駐しているので、重度の要介護者にも対応できます。看取り対応をしている施設も増えています。

入居条件

施設によって異なりますが、多くは要介護1以上、または65歳以上を条件にしています。「自立」の方でも入れる施設もあれば、要介護3以上に限定している施設もあります。事前に確認が必要です。

費用の内訳

入居一時金は0円〜1,380万円と、施設によって天と地ほどの差があります。毎月の費用は14.5万〜29.8万円が相場です。

  • 介護サービス費(自己負担分):約1.5万〜3万円(定額制が多い)
  • 居住費(家賃):約5万〜15万円
  • 食費:約4万〜6万円
  • 管理費(共益費・水光熱費など):約2万〜5万円
  • その他(おむつ代、医療費、レクリエーション費など):約1万〜3万円

入居一時金が高額な施設は、その分だけ毎月の家賃が安くなる傾向があります。逆に、入居一時金ゼロ円の施設は毎月の費用が高めに設定されています。

メリット

  • 24時間介護スタッフが常駐。夜間の対応も安心
  • 特養と違い、比較的すぐに入居できる(空きがあれば数日〜数週間)
  • 介護サービスが施設内で完結する(外部の事業所を探す必要がない)
  • レクリエーションやイベントが充実している施設が多い

デメリット

  • 月額費用が高い。年金だけでは賄えないケースが多い
  • 入居一時金が高額な施設では、早期退去時の返還ルール(償却)に注意が必要
  • 施設ごとのサービスの質の差が大きい。「値段が高い=良い施設」とは限らない
  • 自由度は特養よりやや高いが、外出や面会に制限がある施設もある

住宅型有料老人ホーム:まだ元気な人の「安心できる住まい」

どんな人に向いているか

「まだ自分で歩けるし食事もできるけど、一人暮らしは不安」「介護が必要になったら、そのとき考えたい」という方に向いています。

たとえば、80歳で一人暮らしのお母さん。体は比較的元気だけど、最近ちょっとした物忘れが増えてきた。子どもとしては「何かあったときにすぐ対応できる環境に移ってほしい」と思っている。そんなケースにフィットします。

介護スタッフが施設内にいるわけではなく、介護が必要になったら外部の訪問介護やデイサービスを自分で手配して利用します。「住まい」は提供するけれど「介護」は別契約、というのがこの施設の基本的な考え方です。

入居条件

施設によりますが、60歳以上または65歳以上が一般的。自立〜軽度の要介護者が中心ですが、要介護度の上限は施設によって異なります。

費用の内訳

入居一時金は0円〜380万円。毎月の費用は8.8万〜19.1万円が相場です。

  • 居住費(家賃):約4万〜10万円
  • 管理費(共益費・水光熱費など):約1万〜4万円
  • 食費:約3万〜5万円
  • 介護サービス費(外部利用した場合の自己負担分):利用量に応じて変動

介護付き有料老人ホームとの大きな違いは、介護費用が「使った分だけ」かかる点です。介護が不要なうちは安く済みますが、介護度が上がると外部サービスの利用が増え、思った以上に費用がかさむことがあります。

メリット

  • 介護付きに比べて月額費用が安い
  • まだ元気なうちから入居でき、環境に慣れておける
  • 外部のサービスを自由に選べる(ケアマネと相談しながらカスタマイズ可能)
  • レクリエーションや食事サービスがある施設も多い

デメリット

  • 介護スタッフが常駐していないので、夜間の急変時に対応が遅れるリスクがある
  • 介護度が上がると費用が一気に膨らむ(介護保険の上限を超えると全額自費)
  • 重度の要介護状態になると「この施設では対応できません」と退去を求められることがある
  • 施設によってサービスの質に大きな差がある

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住):バリアフリーの賃貸マンション

どんな人に向いているか

「施設に入る」というより「安全なマンションに引っ越す」感覚に近い施設です。自分の生活リズムを大事にしたい。自由に外出もしたい。でも、もし倒れたときに誰かが気づいてくれる環境がほしい。そんな方に向いています。

たとえば、定年後に夫婦二人で住んでいたけれど、配偶者が亡くなって一人になった。体は元気だけど、お風呂で転んだりしたら誰も気づいてくれない。こうした「見守りがほしい自立高齢者」にぴったりです。

入居条件

60歳以上の方、または要介護・要支援の認定を受けている方。自立の方でも入居できるのがサ高住の特徴です。

費用の内訳

入居一時金は0円〜27万円と比較的少額(敷金として数ヶ月分を求められるケース)。毎月の費用は11.1万〜20万円が相場です。

  • 家賃:約5万〜10万円
  • 管理費・共益費:約1万〜3万円
  • 食費(食事サービスを利用する場合):約3万〜5万円
  • 安否確認・生活相談サービス費:家賃や管理費に含まれることが多い
  • 介護サービス費(外部利用した場合):利用量に応じて変動

サ高住は「賃貸住宅」なので、契約形態もアパートに近い仕組みです。退去時も敷金の精算が中心で、有料老人ホームのような複雑な償却ルールは基本的にありません。

メリット

  • 初期費用が安い。高額な入居一時金が不要
  • 生活の自由度が高い。外出・外泊も基本的に自由
  • 自立の段階から入居できるので、元気なうちに住み替えられる
  • 賃貸契約なので、合わなければ退去しやすい

デメリット

  • 介護スタッフの常駐義務がない。夜間は警備員だけという施設もある
  • 介護が必要になったら自分で外部サービスを手配する必要がある
  • 重度の要介護状態になると住み続けるのが難しくなる
  • 「サ高住」の名前でも、実態は施設によってピンキリ。見学が必須

サ高住は国土交通省の管轄で、介護施設というより「高齢者向け住宅」に分類されます。この点を理解しておかないと、「入ったのに介護してもらえない」という期待外れが起きます。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護):認知症の人が安心して暮らす場所

※この記事で言う「グループホーム」は、介護保険の「認知症対応型共同生活介護」のことです。障害者総合支援法に基づく障害者向けグループホーム(共同生活援助)とは別の制度ですのでご注意ください。

どんな人に向いているか

認知症と診断されていて、少人数の家庭的な環境でケアを受けたい方に向いています。大規模な施設ではなく、「もう一つの家族」のような雰囲気の中で暮らしたい方に最適です。

たとえば、認知症で火の消し忘れが増えて一人暮らしが危なくなった。でもまだ歩けるし、料理や洗濯などの家事も少しはできる。特養に入るほど重度ではないけれど、一人にしておけない。こうした「認知症はあるけど体は比較的元気」な方にフィットします。

グループホームでは、入居者がスタッフと一緒に料理や掃除をしながら暮らします。「何もしなくていい」のではなく、「できることは自分でやる」のがこの施設の基本方針です。認知症の進行を遅らせる効果があると言われています。

入居条件

要支援2以上で、医師から認知症の診断を受けていることが必須です。さらに、施設がある市区町村に住民票があること(地域密着型サービスのため)が原則です。つまり、隣の市のグループホームには入れないケースがあります。

費用の内訳

入居一時金は0円〜16万円と比較的少額。毎月の費用は8.3万〜13.8万円が相場です。

  • 介護サービス費(自己負担分):約1万〜2.5万円
  • 居住費(家賃):約3万〜6万円
  • 食費:約3万〜4万円
  • 管理費・日常生活費:約0.5万〜1.5万円

民間施設の中では最も費用が安い部類です。厚生年金を受給している方なら、年金の範囲内で賄える可能性が十分にあります。

メリット

  • 少人数(1ユニット5〜9人)なので、スタッフとの距離が近い
  • 認知症ケアに特化した専門的な対応が受けられる
  • 家庭的な雰囲気で、大規模施設が苦手な方にも馴染みやすい
  • 費用が民間施設の中では比較的安い

デメリット

  • 認知症の診断がないと入居できない
  • 住民票がある市区町村の施設しか利用できない(地域制限)
  • 医療的ケアの対応に限界がある。重い病気になると退去を求められることがある
  • 体の状態が悪化して寝たきりになった場合、対応できない施設が多い

実際にどれくらいの人が施設に入っているのか

「介護が必要になったら施設に入る」。漠然とそう思っている方は多いかもしれません。でも現実は、介護サービスを利用している人の約7割は、施設に入らず自宅で暮らしています。

介護サービス利用者609万人の内訳

在宅が7割、施設は2割以下

厚生労働省のデータによると、介護保険サービスを実際に利用している人は全国で約609万人います。その内訳を見ると、かなり偏りがあります。

サービスの利用形態 利用者数 全体に占める割合
在宅サービス(訪問介護・デイサービスなど) 422万人 69.2%
地域密着型サービス(グループホームなど) 91万人 15.0%
施設サービス(特養・老健・介護医療院) 96万人 15.8%

約7割の人が「自宅で訪問介護やデイサービスを使いながら暮らす」という選択をしています。特養や老健などの施設に入っている人は、全体の15.8%(約96万人)しかいません。

「施設に入るのが当たり前」ではなく、「施設に入れる人のほうが少数派」。これが日本の介護の現実です。

特養に入れているのは全体のわずか9.6%

施設サービスの中身をさらに分解すると、特養に入居しているのは約58.7万人。介護サービス利用者全体(609万人)のわずか9.6%です。

費用が安くて看取りまで対応してくれる特養は、みんなが入りたい施設です。でも実際には、要介護者全体の1割にも満たない人しか入れていない。この需要と供給のギャップが、次に説明する「待機者問題」を生んでいます。

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特養には約25万人が「入居待ち」している

特養が人気な理由は明白です。初期費用ゼロ、月額費用も安い、収入が少ない人への減免制度もある。でも、その分だけ入りたい人が殺到します。

待機者の内訳

最新の調査(厚生労働省発表)によると、全国の特養の入所申込者(待機者)は約25.3万人に上ります。2015年の制度改正で入所要件が「原則要介護3以上」に厳格化されましたが、それでも膨大な数の人が順番を待っています。

要介護度 待機者数 状態の目安
要介護3 約9.2万人 自力での立ち上がりや歩行が難しい
要介護4 約8.1万人 日常生活全般に全面的な介助が必要
要介護5 約4.9万人 最重度。意思疎通が難しく寝たきりが多い
要介護1・2(特例) 約3.1万人 特例入所の対象

過去の調査と比べると少しずつ減少傾向にはありますが、それでも25万人超が待っている状態です。減った理由は、国や自治体が施設を増やしたことに加え、有料老人ホームやサ高住など民間の受け皿が増えたことが大きいとされています。

約10万人が「自宅で待機」している現実

待機者の中で特に深刻なのが、特養の順番を待ちながら自宅で暮らしている約10.6万人の存在です。待機者全体の約4割以上を占めています。

老健や民間施設に「つなぎ」として入りながら待つ人もいますが、経済的な理由でそれもできず、自宅で耐えている人が10万人以上いるのです。

要介護3以上ということは、自力でトイレに行けない状態です。昼間はなんとか訪問介護やデイサービスで凌いでも、夜間の排泄介助や認知症の徘徊対応は、すべて家族の肩にのしかかります。

さらに皮肉なのが、特養の入所は申し込み順ではなく「緊急度」で決まることです。家族が必死に在宅介護を成立させていると、「まだ在宅でもっている」と判定されて順番が後回しになる。頑張れば頑張るほど入れなくなるという矛盾が起きています。

都市部では待機がとくに深刻で、東京都の要介護3以上の待機者は約1.8万人で全国最多です。逆に地方では空きベッドが出始めている施設もあり、地域差が大きくなっています。

年金だけで施設のお金を払えるのか?

これが一番気になるところだと思います。結論から言うと、もらっている年金の種類と、選ぶ施設の組み合わせ次第です。

年金って実際いくらもらえるの?

最新のデータによると、年金の平均額はこんな感じです。

年金の平均受給額(最新年度)

  • 国民年金だけの人:月に5万円くらい
  • 厚生年金がある人:月に14万〜15万円くらい

一番安い特養でも、毎月10万〜14万円かかります。国民年金だけの人は、どうやっても毎月数万円足りません。

厚生年金をもらっている人なら、特養やグループホーム(月8.3万〜13.8万円)は計算上ギリギリ払えます。ただし、おむつ代・医療費・日用品費は別にかかるので、実際には「ギリギリか、ちょっと足りない」というのが現実です。

貯金はどのくらいのペースでなくなるのか

「今の貯金で何年もつのか」。これを知るには、簡単な計算が必要です。

例1:月25万円の施設に入る場合(厚生年金の手取りが月20万円の人)

毎月5万円の赤字。年間で60万円ずつ貯金が減ります。入居一時金500万円と合わせると、15年で約1,400万円が消える計算です。

例2:月15万円の施設に入る場合(国民年金中心で月10万円の人)

こちらも毎月5万円の赤字。貯金が500万円あったとしても、約8年でお金が完全になくなります。

「8年あれば大丈夫でしょ」と思うかもしれません。でも、認知症や要介護状態が10年、15年と続くケースは珍しくありません。8年では足りない可能性が十分にあるのです。

特養待ちの間に貯金が消えていく恐怖

特養の順番を待つ間、経済的な理由から民間施設を「つなぎ」として利用する家族も多くいます。ここで起きるのが、公的年金と民間施設の費用のギャップによる急速な資産枯渇です。

特養なら月10万〜14万円で済むのに、民間施設に入った瞬間に月15万〜30万円に跳ね上がる。毎月の赤字を貯金から埋め続けて、いざ特養の順番が回ってきたときには、もう貯金が底をついている。これが「老後破産」と呼ばれる状態です。

こうした事態を防ぐためにも、早い段階で資金計画を立てておくことが大切です。

【お金が足りなくならないためのチェックリスト】

  • 今ある貯金・資産の合計を把握する(預貯金、保険、不動産など)
  • 年金から税金や保険料を引いた「手取り額」を計算する
  • 施設に「入居一時金」と「毎月の費用の内訳」を聞く
  • おむつ代・医療費・日用品など「表に出ない費用」を月1〜3万円で見積もる
  • 介護度が上がって費用が増えた場合の「最悪パターン」でも計算してみる
  • 特養待ちの期間に民間施設を使う場合の「つなぎ費用」も計算に入れる

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年金だけじゃ足りない。そんなときに使える公的制度

年金だけでは払えない。貯金も少ない。そんな状況でも、使える公的な支援制度がいくつかあります。知らないと損をする制度ばかりなので、ぜひ目を通してください。

特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)

名前は難しいですが、やっていることはシンプルです。「収入が少ない人は、施設の食費と部屋代を安くしてもらえる」という制度です。

対象になるのは、住民税が非課税の世帯で、貯金などの資産も一定以下の方。特養・老健・介護医療院・ショートステイなどで使えます。足りない分は介護保険から補てんされるので、国民年金だけの人でも特養に入れる可能性が出てきます。

老齢年金生活者支援給付金

年金が少ない人に、国が少しだけ上乗せしてくれるお金です。以下の条件をすべて満たす65歳以上の方が対象になります。

給付金をもらえる主な条件

  • 65歳以上で、老齢基礎年金をもらっている
  • 同じ世帯に住んでいる人が全員、住民税を払っていない(非課税)
  • 前の年の年金収入とその他の所得を合わせて約81万円以下(※)

※昭和31年4月2日以後に生まれた方の場合。補足的な給付金を含めると約91万円以下。

金額はそこまで大きくありませんが、「もらえるのに申請していなかった」という人が少なくありません。自分が該当するかどうか、年金事務所で確認してみてください。

ケアハウス(軽費老人ホーム)

収入に応じて利用料が割引される施設です。月々の負担を抑えたい低所得の高齢者にとって、有力な選択肢になります。ただし、施設によっては入居時にまとまったお金が必要な場合もあるので、事前に確認しましょう。

生活保護を受けている人でも施設に入れるの?

「生活保護を受けていたら、施設には入れないんじゃないか」。そう思っている方もいるかもしれません。答えは、入れる施設はあります。ただし、選べる範囲はかなり狭くなります。

入れる施設は主に3種類

生活保護でも入れる施設

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 有料老人ホーム(費用が安い一部の施設に限る)
  • グループホーム

お金はどこから出るのか

生活保護にはいくつかの「扶助」があり、それを組み合わせて施設の費用をまかないます。

住宅扶助:施設の家賃にあたる部分を、自治体が決めた上限額の範囲で支給してくれます。

生活扶助:食費や日用品など、日々の生活にかかるお金が出ます。施設にいる人には加算が付くこともあります。

介護扶助・医療扶助:介護保険の自己負担分や、病院の医療費は全額カバーされます。窓口でお金を払う必要はありません。

でも現実は甘くない。「住宅扶助の上限」が壁になる

一番の問題は、住宅扶助には自治体ごとに「上限額」があることです。この上限を1円でも超える家賃の施設には、原則として入れません。

そのため、生活保護の人が入れるのは「生活保護対応」として家賃を上限ギリギリに設定している特定の施設だけ、というのが現実です。

さらに、施設側にも事情があります。行政との手続きが面倒だったり、他の入居者との兼ね合いを理由に、生活保護の受け入れに人数制限を設けている施設が多くあります。

生活保護で施設入居を考える場合は、まず担当のケースワーカーに相談するのが鉄則です。自分で施設を探し回るよりも、ケースワーカーから「生活保護OK」の施設情報をもらうほうが確実で早いです。

スタッフは何人いるの? 昼と夜でこんなに違う

「スタッフがどれくらいいるか」は、見落としがちですが、ケアの質に直結する超重要ポイントです。

昼間の人員配置ルール

特養や介護付き有料老人ホームには、「入居者3人に対してスタッフ1人以上」(いわゆる「3対1」ルール)が法律で決められています。

職種 何人いるか 補足
施設長 1人 常勤が原則
介護スタッフ・看護スタッフ 入居者3人につき1人以上 要支援の人は10人につき1人以上
看護スタッフ 入居者の人数に応じて追加 30人まで最低1人。以降50人ごとに1人追加
生活相談員 入居者100人につき1人以上 入退去の手続きや行政との連絡役
リハビリ担当 1人以上 理学療法士や作業療法士など

ただし、この「3対1」は書類上の計算(常勤換算)での話です。「3対1だから安心」と額面通りに受け取らないほうがいいでしょう。

サ高住や住宅型有料老人ホームはスタッフがかなり少ない

サ高住は法律上の義務が「安否確認」と「生活相談」だけなので、介護スタッフの常駐義務がありません。住宅型有料老人ホームも同様に、介護は外部サービスに委ねる設計です。

夜間はさらに手薄になります。緊急通報のボタンがあるだけとか、介護の資格を持っていない警備員が1人いるだけ、という施設も珍しくありません。

施設を選ぶときに、「夜は何人体制ですか?」と聞くことを強くおすすめします。この質問ひとつで、施設の本気度がわかります。

グループホームの夜間スタッフ。ルールが変わったって本当?

介護施設の中で、最近一番大きくルールが変わったのが「グループホーム」の夜のスタッフ体制です。

もともとのルール:「1グループに夜勤1人」が絶対だった

グループホームでは、認知症の方が1ユニット(5〜9人)で一緒に暮らしています。夜でも「1ユニットに最低1人の夜勤スタッフ」を置くことが義務でした。2ユニットの施設なら夜に2人です。

しかし人手不足と人件費の高騰で、夜勤スタッフを確保できない施設が増えてきました。

2021年・2024年の制度改定で何が変わったか

国は、見守り機器を使えばスタッフを少し減らしてもいい、というルール変更を行いました。

グループホーム夜間体制の主な変更点

  • ベッドセンサーなどの見守り機器を入居者の10%以上に設置し、安全対策の委員会も作った場合、夜勤スタッフの基準を「0.9人」に緩和
  • 1人の夜勤スタッフが見るユニット数の上限を「2つまで」から「3つまで」に拡大
  • 新しく作る施設では、1ユニットの人数上限を「10人→最大15人」に拡大

でも実際は、ほとんどの施設が前のルールのまま

「3ユニットを1人で」は、あくまで厳しい条件をすべて満たした施設だけに認められる特例です。

認知症のケアは機械だけではどうにもなりません。ベッドセンサーは「起き上がった」と教えてくれますが、パニックで歩き回る方を落ち着かせることはスタッフにしかできません。だから多くの施設は、あえて従来の「1ユニット1人」を守っています。

施設を見学するときは、「夜は何人体制ですか? 1ユニットに1人いますか?」と聞いてみてください。パンフレットには書いていないことが多いので、直接聞くのが一番確実です。

入居一時金って何?「返ってくるお金」と「返ってこないお金」がある

民間施設(とくに有料老人ホーム)に入るとき、「入居一時金」というお金を求められることがあります。すべての施設にあるわけではありませんが、仕組みを知らないとトラブルになりやすいので、ここで説明しておきます。

居一時金600万円はこうやって減っていく

なお、公的施設(特養・老健)には入居一時金はありません。グループホームやサ高住も初期費用は0〜数十万円程度のことが多いです。入居一時金が大きな金額になるのは、主に有料老人ホームの話です。

入居一時金=「家賃のまとめ払い」

入居一時金とは、これから住む分の家賃やサービス費用をまとめて前払いするお金です。アパートの敷金のように「出るときにほぼ戻ってくる」ものではありません。

ここで知っておかないとマズいのが、「償却(しょうきゃく)」という仕組みです。簡単に言うと、「払ったお金が少しずつ施設のものになっていく」ルールのことです。

具体的な数字で見てみよう

入居一時金のシミュレーション例

  • 入居一時金:600万円
  • 初期償却率:20%(入居した瞬間に120万円が施設のものになる)
  • 残りの償却期間:5年(60ヶ月)
  • 毎月の償却額:残り480万円 ÷ 60ヶ月 = 月8万円ずつ減っていく

入居した瞬間に120万円は「もう返ってこないお金」になります。残りの480万円は、毎月8万円ずつ施設に吸い取られていきます。

もし2年(24ヶ月)で退去したら? 288万円が戻ってきます。でも5年以上住んだら、返ってくるお金はゼロ円です。

とくに注意したいのが、特養待ちで民間施設を「つなぎ」として使う場合です。数百万円の入居一時金を払って入ったのに、2〜3年で特養に移ると、初期償却のルールによって大きな金額が返ってこない可能性があります。

契約書にサインする前に、必ず「初期償却率」「償却期間」「償却方法(定額か定率か)」の3つを確認してください。

「保証人がいない」と施設に入れない?

お金の話ともスタッフの話ともまったく違う次元で、施設入居を止めてしまう壁があります。それが「身元保証人」の問題です。

保証人の役割は、想像以上に重い

施設が保証人に求めるのは、お金の保証だけではありません。

  • 利用料を払えなくなったときの立て替え(連帯保証)
  • 急に具合が悪くなったときの緊急連絡先
  • 入院するときや手術のときの同意サイン
  • 亡くなったときの引き取り・遺品整理・部屋の片付け

多くの施設は保証人を「親族」に限定し、年齢制限(65歳未満など)を設けています。「おひとりさま高齢者」が保証人を見つけられず入居を断られるケースが増えています。

保証人がいないときの3つの方法

1. 保証人なしで入れる施設を探す

数は少ないですが、保証人を求めない施設が一部あります。

2. 成年後見制度を使う

家庭裁判所が「成年後見人」を選んでくれます。ただし、手術の同意や連帯保証はできないため、施設の要求をすべてカバーできるわけではありません。

3. 身元保証会社を使う(一番現実的)

民間の身元保証会社やNPO法人が、家族の代わりに保証から死後の手続きまで引き受けてくれます。費用は数十万〜100万円以上。まずは地域包括支援センターに相談するのがおすすめです。

まとめ:施設選びは「消去法」で絞るのがコツ

介護施設の種類は多く、費用の仕組みも複雑です。全部を完璧に理解してから動こうとしたら、いつまでも決められません。

失敗しない施設選びの3ステップ

おすすめは、以下の順番で「合わないものを消していく」やり方です。

ステップ1:介護度で候補を絞る

要介護3以上 → 特養が第一候補。要支援〜要介護2 → 住宅型やサ高住。認知症がある → グループホーム。退院後のリハビリが必要 → 老健。

ステップ2:お金で現実的なところに絞る

年金と貯金から「月にいくらまで出せるか」を計算する。負担限度額認定などの割引制度も必ずチェック。

ステップ3:場所とスタッフ体制で最終判断

家族が通える距離か。夜のスタッフは何人か。見学して、自分の目で確かめる。

特養は費用が安く看取りまで対応してくれますが、全体の9.6%しかカバーできておらず、約25万人が順番待ちをしています。特養を第一志望にしつつも、民間施設も含めた「プランB」を持っておくことが、結果的に家族を守ることにつながります。

大事なのは、100点満点の施設を見つけることではなく、「致命的なハズレを引かないこと」です。この記事の情報が、あなたの施設選びの判断材料になれば幸いです。

よくある質問(FAQ)

Q. 介護が必要になったら施設に入るのが普通ですか?

実はそうではありません。介護サービスを利用している人の約7割は、施設に入らず自宅で暮らしています。施設に入っている人は全体の約16%です。

Q. 特養は申し込んでからどのくらい待ちますか?

都市部では数ヶ月〜数年待ちになることがあります。全国で約25万人が待機中。複数の施設に同時に申し込むのがおすすめです。

Q. 老健に長く住み続けることはできますか?

老健は在宅復帰を目指す施設なので、原則3〜6ヶ月が入所期間の目安です。状態が安定すると退所を求められます。ただし、現実には行き場がなく長期化しているケースもあります。

Q. サ高住と住宅型有料老人ホーム、何が違うの?

どちらも介護スタッフが常駐しない点は同じですが、サ高住は「賃貸住宅」、住宅型は「老人ホーム」という位置づけです。サ高住のほうが初期費用は安く、退去もしやすい傾向があります。住宅型はレクリエーションや食事などのサービスが充実している施設が多いです。

Q. グループホームは認知症でないと入れないの?

はい。医師から認知症の診断を受けていることが入居条件です。さらに施設がある市区町村に住民票があることも原則必要です。

Q. 年金が月5万円しかありません。施設に入れますか?

「負担限度額認定」を使えば、食費と部屋代がかなり安くなります。それでも足りなければ生活保護の申請も選択肢です。市区町村の介護保険窓口に相談してください。

Q. 生活保護を受けていても有料老人ホームに入れますか?

住宅扶助の上限額の範囲内であれば、一部の安価な施設に入れます。担当のケースワーカーに聞くのが確実です。

Q. 保証人がいなくても施設に入れますか?

保証人なしで入れる施設は少ないですが存在します。身元保証会社を使う方法もあります。地域包括支援センターに相談してください。

Q. 入った後に介護度が上がったらどうなりますか?

特養ならそのまま住み続けられます。グループホーム・住宅型・サ高住は、重い病気や寝たきりになると退去を求められることがあります。入居前に必ず確認しましょう。

参考・出典

  • 厚生労働省「令和5年度 介護保険事業状況報告(年報)」
  • 厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
  • 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
  • 厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」
  • 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「2024年度 特別養護老人ホームの人材確保に関する調査結果」
  • 国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅制度について」

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