病気やケガで働くことが難しくなったとき、「障害年金って自分はもらえるの?」と不安になりますよね。
障害年金は、国が定めた基準以上の障害状態になったときに支給される公的年金です。手足の障害だけでなく、精神疾患やがん、糖尿病なども対象になります。
ただし、障害年金は「社会福祉」ではなく「保険制度」です。年金保険料を納めていなければ、原則として受給できません。また、初診日にどの年金に加入していたかで、受け取れる年金の種類や金額が大きく変わります。
先に結論として、読者が迷いやすいポイントは次の3つです。ここを押さえると「自分のケースがどうなるか」を判断しやすくなります。
- 初診日:いつが初診日か(証明できるか)
- 初診日の加入制度:国民年金か厚生年金か
- 保険料納付状況:未納ではなく「納付・免除」で要件を満たしているか
この記事では、障害年金の仕組みから受給要件、金額の計算方法、請求手続きまで、初心者の方にもわかりやすく解説します。「自分は対象になるのか」「いくらもらえるのか」を判断できるようになります。
■目次
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障害年金の基本|障害基礎年金と障害厚生年金の違い
障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。どちらを受け取れるかは、初診日にどの年金に加入していたかで決まります。

初診日に国民年金に加入していた場合→「障害基礎年金」が支給されます。自営業者、フリーランス、学生、無職の方などが該当します。
初診日に厚生年金に加入していた場合→「障害厚生年金」が支給されます。会社員や公務員の方が該当します。障害厚生年金は、障害基礎年金に上乗せして支給されるため、受給額が多くなります。
例外として、20歳前(年金制度に加入する前)や60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間)に初診日がある場合は、障害基礎年金が支給されます。
初診日とは何か|なぜ重要なのか
初診日とは、障害の原因となった病気やケガで、初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日のことです。
この初診日が重要な理由は3つあります。
- どの年金制度に加入していたかを確定する基準日になる
- 保険料納付要件を満たしているかの判定基準日になる
- 障害認定日(1年6ヶ月後)の起算日になる
初診日の証明ができないと、障害年金の請求自体ができません。そのため、病院の受診状況等証明書やカルテなどで初診日を確定させる必要があります。
転院を繰り返している場合は、一番最初にその傷病で受診した医療機関の受診日が初診日になります。後から「あの病院が初診だった」と気づくケースもあるため、請求前にしっかり確認しましょう。
障害年金の対象となる病気・ケガ
障害年金の対象となるのは、手足の障害などの「外部障害」だけではありません。精神疾患やがん、糖尿病などの「内部障害」も広く対象になります。
【主な対象疾患】
外部障害:眼、聴覚、肢体(手足など)の障害
精神障害:統合失調症、うつ病、双極性障害、てんかん、認知症、知的障害、発達障害など
内部障害:呼吸器疾患、腎疾患、肝疾患、心疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど
ポイントは、病名ではなく「生活や就労にどれだけ支障があるか」が判断基準になることです。医師の診断書で、日常生活の制限や就労状況が詳しく記載されることが重要です。
同じ病名でも、障害の程度によって1級・2級・3級の等級が分かれます。また、診断書の書き方次第で認定結果が変わることもあるため、障害年金に詳しい医師に診断書を依頼することをおすすめします。
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障害基礎年金の受給要件と金額
障害基礎年金は、初診日に国民年金に加入していた方が対象です。受給するには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
①初診日要件
初診日に国民年金に加入していること。または、20歳前や60歳以上65歳未満の未加入期間に初診日があること。
※20歳前の傷病による障害基礎年金には、本人の所得制限があります。
②保険料納付要件
初診日の前日時点で、以下のいずれかを満たしていることが必要です。

原則:初診日のある月の前々月までの公的年金加入期間のうち、3分の2以上の期間について保険料が納付または免除されていること
特例(65歳未満の場合):初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
この要件は「初診日の前日」時点で判定されます。初診日以降に慌てて保険料を納付しても、要件を満たしたことにはなりません。
また、学生納付特例や納付猶予を受けていた期間は「免除期間」として扱われ、納付要件を満たします。未納と免除は全く別物なので、経済的に厳しい場合は必ず免除手続きをしておきましょう。
③障害状態要件
障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月経過した日)に、国が定めた障害等級(1級または2級)に該当する障害状態であること。

ただし、1年6ヶ月を待たずに症状が固定した場合(人工透析を開始して3ヶ月経過した、切断した、ペースメーカーを装着したなど)は、その時点で請求できます。
障害等級の目安
1級の例:
- 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両眼の視力の和が0.04以下のもの(原則として矯正視力)
- 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
- その他日常生活において常時介護を必要とする程度のもの
2級の例:
- 1上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 1下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの(原則として矯正視力)
- 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
- その他日常生活が著しい制限を受ける程度のもの
精神疾患の場合、1級は「常時援助が必要」、2級は「日常生活に著しい制限がある」という基準になります。具体的には、一人で外出できない、服薬管理ができない、金銭管理ができないなどの状態です。
障害基礎年金の支給額(参考:令和6年度額)
1級:816,000円×1.25=1,020,000円+子の加算
2級:816,000円+子の加算
子の加算額:
第1子・第2子:各234,800円
第3子以降:各78,300円
※金額は令和6年度(2024年度)のものです。実際は物価等の変動により毎年度改定されます。
※子とは、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子、または20歳未満で障害等級1級・2級の障害がある子を指します。
【計算例】本人が障害基礎年金1級、子ども2人の場合
- 本人分:1,020,000円
- 子の加算:234,800円×2=469,600円
- 合計:1,489,600円(年額)
月額にすると約12万4千円です。受給額だけで家計を組むのが不安な場合は、他の福祉制度(障害者手帳による医療費助成、税金の減免など)と組み合わせることで、負担を軽減できる可能性があります。
障害厚生年金の受給要件と金額
障害厚生年金は、初診日に厚生年金に加入していた方が対象です。障害基礎年金に上乗せして支給されるため、受給額が多くなります。
障害厚生年金の3つの要件
①初診日要件:厚生年金に加入している間に、医師の診療を受けたこと
②保険料納付要件:障害基礎年金と同じ(3分の2要件または直近1年要件)
③障害状態要件:障害認定日に1級・2級・3級のいずれかに該当すること

障害厚生年金の大きな特徴は、3級が設けられていることです。障害基礎年金は1級・2級のみですが、厚生年金加入者は3級でも受給できます。
また、障害の程度が3級にも該当しない軽い場合でも、初診日から5年以内に症状が固定すれば「障害手当金(一時金)」が支給されます。
障害等級3級の例
- 両眼の視力が0.1以下のもの(原則として矯正視力)
- 両耳の聴力が40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度のもの
- 労働が著しい制限を受ける、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級は「日常生活には大きな支障はないが、労働に制限がある」程度の障害を想定しています。たとえば、フルタイム勤務は難しいが短時間なら働けるような状態です。
障害厚生年金の支給額

1級:報酬比例の年金額×1.25+配偶者加給年金額(234,800円)+障害基礎年金1級
2級:報酬比例の年金額+配偶者加給年金額(234,800円)+障害基礎年金2級
3級:報酬比例の年金額(最低保障額612,000円)
※配偶者加給年金額は、65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます。
※上記の加算額や最低保障額は令和6年度のものです。
1級・2級の場合は、障害基礎年金と障害厚生年金の両方が支給されるため、金額が大きくなります。一方、3級は障害基礎年金が支給されず、障害厚生年金のみです。
報酬比例部分の計算方法
報酬比例部分の年金額は、厚生年金加入中の平均給与と加入月数によって決まります。

計算式は複雑ですが、ざっくり言うと「会社員時代の給料が高く、加入期間が長いほど年金額が増える」仕組みです。
ただし、厚生年金の加入期間が300月(25年)未満の場合でも、300月とみなして計算されます。たとえば入社3年目で障害状態になった場合でも、25年加入したものとして年金額が計算されるため、若い方でも一定額が保障されます。
具体的な金額を知りたい場合は、年金事務所で「年金見込額試算」を依頼すると、おおよその金額を教えてもらえます。
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障害年金を請求する流れと必要書類
請求先と相談窓口
障害年金の請求書類は、住所地の市区町村役場または年金事務所に提出します。
補足として、一般に障害基礎年金は市区町村役場、障害厚生年金は年金事務所で案内されることが多いですが、まずはどちらに相談しても初診日の確認や必要書類の説明を受けられます。
請求前に、年金事務所や街角の年金相談センターで相談することをおすすめします。初診日の確認や必要書類の説明を受けられます。
請求に必要な主な書類
- 年金請求書(障害基礎年金用または障害厚生年金用)
- 年金手帳またはマイナンバーカード
- 戸籍謄本、住民票など(請求日から6ヶ月以内のもの)
- 医師の診断書(障害認定日と請求日が1年以上離れている場合は2通必要)
- 受診状況等証明書(初診の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合)
- 病歴・就労状況等申立書(発病から現在までの経過を自分で記入)
- 受取先金融機関の通帳コピー
このほか、障害の種類や状況によって追加書類が必要になることがあります。
診断書は最も重要な書類
障害年金の審査で最も重視されるのが医師の診断書です。診断書の記載内容によって、認定されるかどうか、何級になるかが決まります。
診断書には「日常生活の制限」「就労状況」「症状の程度」などを詳しく記載する欄があります。医師が実際の生活状況を把握していないと、実態よりも軽く書かれてしまうことがあります。
そのため、診察時に日常生活で困っていることを具体的に伝えることが大切です。また、障害年金の診断書作成に慣れた医師に依頼することをおすすめします。
請求から支給までの期間
請求してから結果が出るまで、通常3~4ヶ月かかります。審査が長引く場合は半年以上かかることもあります。
認定されれば、障害認定日の翌月分から年金が支給されます。請求が遅れた場合でも、5年前までさかのぼって受給できます(時効は5年)。
よくある疑問|働きながら障害年金はもらえる?
働いていても障害年金は受給できる
障害年金は「働けないこと」が要件ではありません。「障害の状態にあること」が要件です。
そのため、働きながら障害年金を受給している人は多くいます。特に精神疾患の場合、短時間勤務や軽作業なら可能だが、フルタイムや責任ある仕事は難しい、という状態で受給しているケースがあります。
ただし、就労状況は診断書に記載され、審査の判断材料になります。「フルタイムで正社員として働いている」と記載されていると、障害の程度が軽いと判断される可能性があります。
障害が軽くなったら支給停止になる
障害年金は、定期的に「障害状態確認届(診断書)」の提出を求められます。更新時に障害の程度が軽くなっていると判断されれば、等級が下がったり、支給停止になったりします。
逆に、障害が重くなった場合は等級を上げる請求(額改定請求)もできます。
傷病手当金との違い
よく混同されるのが「傷病手当金」です。傷病手当金は、病気やケガで働けないときに健康保険から支給される給付で、働いていないことが要件です。
一方、障害年金は障害状態にあることが要件なので、働いていても受給できます。この2つは全く別の制度です。
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まとめ|障害年金で押さえるべきポイント
障害年金は、病気やケガで生活や仕事に支障が出たときの重要な生活保障です。最後に、押さえるべきポイントをまとめます。
- 初診日にどの年金に加入していたかで、受け取れる年金の種類が決まる
- 保険料納付要件を満たしていないと受給できない(未納に注意)
- 障害基礎年金は1級・2級のみ、障害厚生年金は1級・2級・3級がある
- 厚生年金加入者は、障害基礎年金と障害厚生年金の両方が受け取れる(1級・2級の場合)
- 診断書の記載内容が認定結果を左右するため、医師への伝え方が重要
- 働きながらでも受給できるが、就労状況は審査の判断材料になる
- 請求から支給まで3~4ヶ月かかる
障害年金の制度は複雑で、自分のケースが該当するか判断が難しいことがあります。迷ったら、まずは年金事務所や社会保険労務士に相談してみましょう。請求のサポートを受けることで、認定される可能性が高まります。
よくある質問
Q1. 障害年金はいつから請求できますか?
A. 原則として、初診日から1年6ヶ月を経過した日(障害認定日)から請求できます。ただし、人工透析を開始して3ヶ月を経過した、切断した、ペースメーカーを装着したなど、症状が固定した場合は1年6ヶ月を待たずに請求できます。
Q2. 過去にさかのぼって受給できますか?
A. 障害認定日に障害状態だったことが証明できれば、最大5年前までさかのぼって受給できます。ただし、障害認定日当時の診断書が必要です。当時のカルテが残っていない場合は、さかのぼり請求が難しくなります。
Q3. 精神疾患でも障害年金はもらえますか?
A. もらえます。うつ病、双極性障害、統合失調症、発達障害、認知症など、精神疾患も障害年金の対象です。日常生活や就労にどの程度支障があるかが判断基準になります。
Q4. 初診日の証明ができない場合はどうすればいいですか?
A. 初診の病院が廃院している、カルテが破棄されているなどの場合、受診状況等証明書が取れないことがあります。その場合、2番目以降の病院の証明書や、第三者証明(初診日当時のことを知る人の証言)などで対応できる場合があります。年金事務所に相談してください。
Q5. 会社を退職した後に症状が悪化した場合はどうなりますか?
A. 初診日が在職中(厚生年金加入中)であれば、退職後に悪化しても障害厚生年金を請求できます。重要なのは「初診日の時点でどの年金に加入していたか」です。退職後に初めて受診した場合は、国民年金加入期間となり、障害基礎年金の対象になります。
Q6. 障害年金を受給していることは会社にバレますか?
A. 障害年金は年金事務所(日本年金機構)から直接本人の口座に振り込まれるため、原則として会社に通知される仕組みではありません。ただし、年末調整や確定申告で障害者控除を受ける場合など、手続きの内容から推測される可能性はあります。
Q7. 障害年金と老齢年金は両方もらえますか?
A. 65歳未満の場合は、障害年金と老齢年金のどちらか一方を選択します。65歳以降は、受給できる年金の組み合わせに一定のルールがあります(同じ「基礎年金」を二重にもらうことはできません)。「障害年金を続けるのが有利か」「老齢年金に切り替えるのが有利か」は人によって異なるため、年金事務所で有利な組み合わせの確認をしましょう。